激しい突っ張りと、負けても倒れない不屈の闘志。1990年代から2000年代初頭の大相撲を沸かせた元関脇・貴闘力さんといえば、あの荒々しい相撲を思い出す方も多いのではないでしょうか。とりわけ2000年春場所で成し遂げた「史上初の幕尻優勝」は、今も語り草になっています。ところがその後、野球賭博問題で角界を追放され、テレビからも姿を消しました。「あの人、今どうしてるんだろう?」——実は今、貴闘力さんはYouTubeで相撲界のタブーを赤裸々に語る”論客”として、まったく新しい第二の人生を歩んでいます。2026年現在の貴闘力さんの「今」を、全盛期から振り返りつつ徹底的にまとめました。
01貴闘力のプロフィール
- 本名
- 鎌苅 忠茂(かまかり ただしげ)
- 四股名
- 貴闘力 忠茂(たかとうりき ただしげ)
- 生年月日
- 1967年9月28日(58歳)
- 出身地
- 兵庫県神戸市兵庫区
- 身長・体重
- 現役時代 180cm・152kg前後
- 所属部屋
- 藤島部屋 → 二子山部屋
- 最高位
- 東関脇
- 主な活動
- YouTuber、飲食店経営、相撲文化の普及活動
かつての盟友であり、同じ二子山部屋で汗を流した貴乃花さんと並ぶと、あの時代の熱気を思い出す方も多いはず。2026年で58歳になりました。
02全盛期の活躍――史上初の幕尻優勝まで
藤島部屋の”暴れん坊”として頭角を現す
貴闘力さんが角界入りしたのは1980年代。のちに大横綱となる貴乃花さん(当時・貴花田)や若乃花さん(当時・若花田)と同じ藤島部屋(のちの二子山部屋)に所属し、いわゆる「若貴世代」を象徴する力士の一人として台頭していきます。
体格に恵まれた大型力士がひしめく中で、貴闘力さんの武器は激しい突っ張りと、何度倒されても向かっていく気迫でした。決して大きくない体を最大限に生かした前へ前への相撲は、観客を熱くさせるものがありました。三賞では敢闘賞を10回も受賞しており、その受賞回数は当時の記録に迫るもの。「敢闘」の名がこれほど似合う力士も珍しかったといえます。
関脇まで駆け上がった突貫力士
最高位は東関脇。三役の常連として長く土俵を務め、殊勲賞3回、技能賞1回と、パワーだけでなく技巧の面でも評価されました。横綱・大関相手に一歩も引かず、金星こそ多くはなかったものの、上位陣を苦しめる相撲を何度も見せています。
土俵際まで追い込まれても最後まであきらめない姿勢は「粘りの貴闘力」として親しまれ、幕内の人気力士として確かな地位を築いていきました。派手さと泥臭さを兼ね備えたその取り口は、玄人筋からも一般のファンからも支持を集めていたのです。
2000年春場所――大相撲史を変えた「幕尻優勝」
貴闘力さんの名を歴史に刻んだのが、2000年3月の大阪場所(春場所)での幕内優勝です。この場所、貴闘力さんは幕内最下位から2番目という、いわゆる「幕尻」に近い番付にいました。そこから初日から白星を重ね、単独トップに立ちます。
好成績を受けて、通常なら当たらない横綱・武蔵丸さん、曙さんとの対戦が終盤に組まれ、2敗を喫しながらも首位を守り抜きました。そして千秋楽に勝利し、13勝2敗で優勝を決定。番付最下位に近い平幕力士が優勝したのは大相撲史上初めてのことで、「史上初の幕尻優勝」として大きな話題になりました。
初土俵から102場所目、32歳での初優勝。長い下積みを経てつかんだ栄冠だっただけに、涙ながらに賜杯を抱いた姿は多くのファンの記憶に残っています。この幕尻優勝は、2020年初場所で徳勝龍さんが優勝した際にも「20年ぶりの幕尻V」として引き合いに出され、あらためて貴闘力さんの偉業が振り返られました。
03角界追放――野球賭博問題という転機
貴闘力さんは2002年9月に現役を引退し、年寄「大嶽」を襲名して部屋を継承。指導者として第二の人生を歩み始めます。しかし2010年、その歩みは思わぬ形で断たれることになりました。
- 2002年9月現役を引退。年寄「大嶽」を襲名し、大嶽部屋の師匠として後進の指導にあたる。
- 2010年6月大相撲の力士や親方らによる野球賭博問題が発覚。当初は否定していたが、大嶽親方(貴闘力さん)は同月、関与を認めたと報じられた。
- 2010年7月4日日本相撲協会の理事会で、野球賭博への関与などを理由に解雇処分が決定。角界を追われることになった。
- 2010年10月東京都内に焼肉店「焼肉ドラゴ」を開店。飲食業で再出発を図る。
- 2020年9月YouTubeチャンネル「貴闘力部屋」を開設。相撲界の内幕を語る発信を始める。
この野球賭博問題では、大関・琴光喜さんと大嶽親方(貴闘力さん)が解雇という最も重い処分を受けました。貴闘力さんはのちに、賭博にのめり込んでいった当時を振り返り、「相撲界の内側でのことだから大丈夫だろうと安易な気持ちでいた」といった趣旨を各種インタビューで語っています(文春オンライン 2022年11月ほか)。
なお貴闘力さん自身は後年、2010年の相撲協会理事選で貴乃花さんを支持したことが、対立勢力から標的にされる一因になったのではないかという見方を語っています。ただしこれは本人の主張であり、処分そのものの直接の理由として公式に認定されたものではありません。いずれにせよ、賭博に関与したこと自体を貴闘力さんは認めており、「自分がバカだった」と反省の弁を述べています。
04焼肉店経営から「相撲再生計画」へ
どん底からの飲食業スタート
角界を追放され、親方株も手放した貴闘力さんが選んだ再出発の道は、飲食業でした。2010年10月、焼肉店を開店。力士時代のちゃんこ作りで培った経験を生かし、店に立つ日々が始まります。テレビの世界からは遠ざかりましたが、地道に商売を続けていきました。
一方で、ギャンブルとの関係を断ち切る難しさとも向き合ってきたことを、後年のインタビューやYouTubeで率直に語っています。華やかな栄光と、そこからの転落。その両方を経験したからこそ語れる言葉が、のちの発信活動の説得力につながっていくことになります。
2020年、YouTube「貴闘力部屋」を開設
貴闘力さんの第二の人生が大きく動き出したのは2020年9月。YouTubeチャンネル「貴闘力部屋」を立ち上げたのです。チャンネルには「〜相撲再生計画〜」というテーマが掲げられ、相撲の魅力や楽しさ、そして厳しさを視聴者に伝え、大相撲人気を再び盛り上げることを目的として発信を続けています。
このチャンネルが注目を集めたのは、単なる相撲解説にとどまらなかったからです。角界の内側を知り尽くした元関脇が、これまでタブーとされてきた話題にも切り込む——そのスタイルが、相撲ファンだけでなく幅広い層の関心を引きました。
相撲界の「闇」に切り込む論客に
貴闘力さんのYouTubeで大きな反響を呼んだのが、八百長問題をはじめとする相撲界の内幕についての発言です。かつて自身が「八百長への誘い」を受けた経験なども交えながら、角界の構造的な問題について持論を展開。実業家のホリエモン(堀江貴文)さんとのコラボ動画では、八百長事件や暴力、テレビ局との利権関係といったテーマまで踏み込み、大きな話題になりました。
こうした発言はセンセーショナルに受け取られがちですが、貴闘力さん自身は「相撲界を良くしたい」という思いから発信していると繰り返し述べています。過去の当事者だからこそ語れる内容に、賛否両論ありつつも耳を傾ける人は少なくありません。
052026年現在の活動
YouTube「貴闘力部屋〜相撲再生計画〜」を精力的に更新
2026年現在も、貴闘力さんの活動の中心はYouTubeチャンネル「貴闘力部屋」です。相撲人気の再興を掲げ、場所ごとの優勝予想や取組解説、相撲界の話題への持論などを定期的に発信し続けています。
2026年に入ってからも更新は途切れず、チャンネル運営スタッフ体制についての率直な胸の内を語る動画や、相撲界に精通していた友人の逝去に触れる動画などが投稿されています。往年の激しい相撲そのままに、思ったことをストレートに語る飾らない語り口は健在で、コメント欄には相撲ファンからの反応が数多く寄せられています。
かつての盟友・貴乃花との再接近
近年の貴闘力さんの動きで注目されるのが、同じ二子山部屋で青春を過ごした貴乃花さんとの再接近です。相撲協会を離れた者同士、相撲文化の普及という共通の思いのもとで、貴乃花さんと語り合う様子がチャンネルで発信され、ファンを驚かせました。
現役時代をともに戦い、その後はそれぞれ角界を去った二人が、あらためて相撲の未来について語り合う。若貴時代をリアルタイムで見てきた世代にとっては、感慨深いものがありますね。
栃木に「そば×ちゃんこ」の店と土俵をオープン
2026年1月、貴闘力さんは飲食業でも新たな一歩を踏み出しました。栃木県鹿沼市に、そばやちゃんこ鍋を提供する飲食店「力貴庵(りきほうあん)」を開業したのです(プレオープンは2025年12月)。共同通信の報道によると、この店は閉園した保育園を改装したもので、店内には相撲ミュージアムと土俵を併設。化粧まわしや優勝額なども展示されているといいます。
元関脇貴闘力さんが、栃木県鹿沼市に、そばやちゃんこ鍋を味わえる店をオープンした。閉園した保育園を改装し、相撲ミュージアムや土俵を併設。相撲文化の継承や、力士のセカンドキャリア構築につなげたいとしている。 出典:共同通信(Yahoo!ニュース配信)2026年3月8日
注目すべきは、この店に込められた思いです。貴闘力さんは約1年間そば打ちの修業を積んだうえで店に立っており、単なる飲食店ではなく「相撲文化の継承」「力士のセカンドキャリア構築」を掲げています。土俵を活用した体験会も検討中とのこと。角界を追われながらも、相撲への愛情は失っていないことがうかがえます。
SNSでの発信も継続
貴闘力さんは公式X(@takatorikibeya)やInstagramでも近況を発信しています。動画の告知や日々の活動を伝えるこれらのアカウントを通じて、ファンとの距離を縮めています。テレビの露出がなくても、自分のメディアを持って直接ファンに語りかけられる時代。貴闘力さんは、その新しい発信のかたちを体現している一人と言えるでしょう。
06まとめ
土俵での荒々しい闘志、史上初の幕尻優勝という栄光、そして野球賭博での角界追放という挫折。浮き沈みの激しい人生を歩んできた貴闘力さんですが、2026年現在は「YouTuber」という意外な肩書きで、相撲界について語り続ける存在になっています。
貴闘力 2026年現在まとめ
- 2000年春場所で「史上初の幕尻優勝」を達成した元関脇
- 2010年、野球賭博問題で日本相撲協会を解雇され角界を追放された
- 2020年にYouTube「貴闘力部屋〜相撲再生計画〜」を開設
- 八百長問題など相撲界の内幕に切り込む発信で幅広い層の注目を集める
- 2026年もチャンネルを精力的に更新中、かつての盟友・貴乃花との再接近も話題に
- 2026年、栃木県鹿沼市にそば・ちゃんこの店と土俵・相撲ミュージアムをオープン
- 「相撲文化の継承」「力士のセカンドキャリア構築」を掲げて活動
栄光も転落もすべて経験したうえで、それでも相撲から離れずにいる貴闘力さん。角界の中にいたときとは違うかたちで、相撲の未来を考え、発信を続けています。賛否のある発言も少なくありませんが、その根っこには相撲への深い愛情があるのは間違いないでしょう。かつての暴れん坊が58歳になった今、どんな「相撲再生」を見せてくれるのか。これからの活動を見守っていきたいですね。