カープファンなら、あの背番号が代走で告げられた瞬間の球場のざわめきを覚えている方も多いのではないでしょうか。168センチの小柄な体で塁上に立ち、ユニフォームが破れるほどのヘッドスライディングで次の塁をもぎ取っていく羽月隆太郎さん。菊池涼介さんの後継者候補とも言われ、2025年には自己最多の74試合に出場して打率.295をマークするなど、まさにこれからという時期を迎えていました。しかし2026年、指定薬物「エトミデート」をめぐる事件で球界を去ることになります。あの俊足内野手は今どうしているのか。報道で確認できた事実に絞って、2026年7月現在の状況をまとめました。
01羽月隆太郎のプロフィール
- 氏名
- 羽月 隆太郎(はつき りゅうたろう)
- 生年月日
- 2000年4月19日(26歳)
- 出身地
- 宮崎県宮崎市
- 身長・体重
- 168cm・70kg(NPB登録)
- 投打
- 右投左打
- 出身校
- 神村学園高等部(鹿児島県)
- プロ入り
- 2018年ドラフト7位・広島東洋カープ
- ポジション
- 内野手(二塁・遊撃)
- 背番号
- 69(2019〜2024年)→ 00(2025〜2026年)
- 通算成績
- 277試合・打率.243・1本塁打・51盗塁
2000年生まれの26歳。プロ野球選手としては本来これからが最も脂の乗る年代だっただけに、複雑な思いで見ている方も多いはずです。
02カープでの歩み――7位指名から切り札へ
神村学園から7位指名でプロの世界へ
羽月隆太郎さんは宮崎県宮崎市の出身。鹿児島の強豪・神村学園高等部で内野手として鳴らし、2018年のドラフト会議で広島東洋カープから7巡目指名を受けてプロ入りしました。下位指名かつ168センチという体格は、当時のプロ野球界では決して恵まれたものではありません。実際、1軍に定着するまでには時間がかかりました。
2020年に17試合でプロデビューを果たすものの打率は.182。2021年は39試合に出場し、プロ初本塁打と初盗塁を記録します。派手なスタートではありませんでしたが、「使えば何かをやってくれる」という印象を少しずつ残していきました。
走塁で見つけた自分の居場所
羽月さんが自分の生きる道を明確に見つけたのが2023年です。この年、50試合の出場ながらチーム最多となる14盗塁をマーク。打率こそ.149と低迷しましたが、それでも起用され続けたのは、走塁という一芸が完全に武器として認められていたからでした。
特徴的だったのが、そのがむしゃらな走り方です。ヘッドスライディングを厭わず、ユニフォームを土まみれにしながら次の塁を奪いにいく。守備固めや代走といった脇役の役割でありながら、球場の空気を一変させる力を持った選手でした。試合終盤に羽月さんの名前がコールされると、それだけでスタンドの期待値が上がる。そんな存在だったんです。
2025年、自己最多の74試合出場
2024年は53試合で12盗塁。そして2025年には自己最多の74試合に出場し、打率.295、17盗塁という自己ベストの成績を残します。それまで「走塁専門」と見られていた選手が、打撃でも結果を出し始めた年でした。
通算では277試合、打率.243、51盗塁。数字だけを見れば決して大選手のものではありません。しかし機動力野球を掲げるカープにとって、羽月さんは確実にチームの色を体現する存在になりつつありました。二塁手・菊池涼介さんの後継者候補として名前が挙がるようになったのも、この頃です。2026年シーズンこそレギュラー定着を、というタイミングでした。
03指定薬物事件の経緯
ここからは事件の話になります。報道で確認できた事実のみを、時系列に沿って整理します。
2026年1月27日、羽月さんは指定薬物エトミデートを使用したとして、医薬品医療機器法違反の疑いで広島県警に逮捕されました。エトミデートは本来、全身麻酔などに使われる医薬品成分です。これを電子たばこ用のカートリッジに混ぜて吸引すると意識障害やふらつきを起こすことから、俗に「ゾンビたばこ」と呼ばれ、2025年前後から国内で規制と摘発が強化されていた薬物でした。
- 2026年1月27日指定薬物エトミデートを使用したとして、医薬品医療機器法違反の疑いで広島県警が逮捕。逮捕時は容疑を否認していたと報じられた。
- 2026年1月28日球団が活動停止処分を科す。
- 2026年2月上旬その後の調べに対し、使用を認める供述をしたと報じられる(時事通信 2026年2月6日)。
- 2026年2月17日広島地検が医薬品医療機器法違反の罪で起訴。翌18日に保釈が認められる。
- 2026年2月25日広島東洋カープが選手契約の解除を公式サイトで発表。沖縄キャンプの最中の出来事だった。
- 2026年5月15日広島地裁で初公判。起訴内容を認め即日結審し、拘禁刑1年・執行猶予3年の判決。
- 2026年5月30日検察・弁護側ともに控訴せず、有罪判決が確定。
起訴されたのは、2025年12月16日ごろに広島市中区の自宅でエトミデートを気化させて吸引したという事実でした。公判で認定された経緯によれば、カートリッジは2025年11月15日、東京から広島の選手寮あてにレターパックで送られたものだったとされています。
球団の対応は早く、逮捕の翌日には活動停止処分、起訴から1週間ほどで契約解除に踏み切りました。背番号00をつけて7年間を過ごした球団との関係は、こうして終わることになります。
04判決とその後に広がった波紋
拘禁刑1年・執行猶予3年
2026年5月15日、広島地裁の井上寛基裁判官は羽月さんに拘禁刑1年、執行猶予3年の判決を言い渡しました。判決では「一日に複数回使用した」といった使用実態が指摘されています。羽月さんは起訴内容を全面的に認め、公判はその日のうちに結審しました。
そして5月30日、検察・弁護側の双方が控訴期限までに控訴せず、有罪判決が確定しています。執行猶予付きのため服役は免れましたが、猶予期間中は2029年まで続くことになります。
法廷での証言が呼んだ波紋
この事件が単なる一選手の問題にとどまらなくなったのは、公判での羽月さん自身の証言がきっかけでした。法廷で羽月さんは、薬物に手を出した経緯について「周囲に吸っているカープ選手がいたので大丈夫だと思った」という趣旨の説明をしています。
この発言を受け、広島東洋カープは全選手を対象とした再調査に乗り出したと報じられました(日本経済新聞 2026年5月)。さらに5月28日には羽月さん自身がSNSのライブ配信で、自分を含む複数のカープ選手が同じ人物から購入していたという趣旨の発言をし、大きな反響を呼びます。
ただし、この点については注意が必要です。羽月さん本人の証言以外に他の選手の関与を裏づける公的な捜査結果や処分は、2026年7月時点で公表されていません。一部週刊誌が実名や写真を報じましたが、球団側は取材に対して具体的な言及を避けており、名前が挙がった選手が薬物を使用したと確認された事実はありません。ここは断定的に語るべきではない部分です。
譲渡側の立件
一方、羽月さんにエトミデートを譲り渡した側についても捜査が進みました。東京都内の会社役員の男が指定薬物の授与の疑いで逮捕・追起訴され、その後も再逮捕されたと報じられています。羽月さん自身は薬物の入手先について「野球関係者ではありません」と説明しています。
052026年現在の活動
故郷・宮崎で社会復帰を模索
有罪判決の確定後、羽月さんは故郷である宮崎県に戻り、社会復帰の道を探っている状況です。プロ野球選手としてのキャリアが26歳で断たれ、一般社会での再出発をゼロから始めることになりました。
その現実は、決して甘いものではなかったようです。判決確定前後のSNS配信では、アルバイトの求人サービスで15件ほど応募し、AI面接まで受けたものの、すべて不採用になったと語っています。
今は無職です。バイトも落ちたし 出典:NEWSポストセブン 2026年6月5日
元プロ野球選手という肩書きが、この状況ではむしろ足かせになっている。報道で伝えられたこの言葉には、そうした厳しさが滲んでいます。事件を起こした本人の責任であることは動かせませんが、26歳で職を探す一人の人間としての現実が、そこにありました。
SNSライブ配信での発信
現在の羽月さんの主な発信手段となっているのが、SNSのライブ配信です。2026年5月28日の配信では、野球関係者やファンに対して「多くの方々を裏切り、失望させてしまった」と涙ながらに謝罪しました。薬物に手を出した経緯についても、2025年4月に知人から「睡眠に効果がある」と説明されて使い始め、11月に家族から違法性を指摘された後も周囲の環境に流されて使用を続けてしまったと説明しています。
その後も配信は断続的に続き、6月には事件当時の状況や日常の話題を語る様子が伝えられました。かなりの数のフォロワーを集めている一方で、配信での発言が新たな波紋を呼ぶ場面もあり、その発信スタイルには賛否が分かれているのが実情です。
なお、羽月さん本人名義とみられるアカウントは複数存在しますが、本記事では公式と確実に確認できたものがなかったため、リンクの掲載は控えます。
現役引退の明言と、これから
進退について、羽月さんは5月28日の配信で現役引退を明言したと報じられています。事件から4か月、まだ26歳という年齢での決断でした。プロ野球選手としてのキャリアは、この時点で区切りがつけられたことになります。
現実的なハードルを考えれば、やむを得ない判断だったのかもしれません。NPBの球団が獲得に動く可能性は極めて低いと関係者は見ており、中南米リーグや米独立リーグといった海外の選択肢も簡単ではないというのが報道での評価でした。少年野球の指導者という道についても、保護者の反発を懸念する声があると伝えられています。
現在は出身地の宮崎県に戻って生活しており、配信は続けていきたいという意向を示しています。あの走塁をもう一度見たいというファンの声は残っていますが、2026年7月現在、野球に関わる具体的な予定が報じられてはいません。
06まとめ
代走で出てきて、盗塁を決めて、泥だらけで生還する。羽月隆太郎さんがカープで担っていた役割は地味なようでいて、試合の流れを変える確かなものでした。2025年に自己最多の74試合出場・打率.295と、選手としてようやく形になり始めた矢先の出来事だっただけに、失われたものの大きさを感じずにはいられません。
羽月隆太郎 2026年現在まとめ
- 2018年ドラフト7位で広島入り、通算277試合・打率.243・51盗塁
- 2025年は自己最多74試合出場・打率.295・17盗塁と飛躍の年だった
- 2026年1月27日、指定薬物エトミデート使用の疑いで逮捕、2月17日に起訴
- 2026年2月25日、広島東洋カープが選手契約の解除を発表
- 2026年5月15日に拘禁刑1年・執行猶予3年の判決、5月30日に確定
- 現在は故郷の宮崎県に戻り、社会復帰を模索している状況
- SNSライブ配信で謝罪と近況を発信、2026年5月28日の配信で現役引退を明言したと報じられた
- 本人証言をきっかけに球団が全選手の再調査を実施、他選手の関与は未確認
執行猶予付きとはいえ有罪判決を受けた事実は重く、失った信頼を取り戻す道のりは平坦ではありません。それでも羽月さんはまだ26歳です。野球という形になるのか、まったく別の道になるのかは分かりませんが、これからどう再出発していくのか、静かに見守りたいところです。