年収1000万円の安定した生活を捨て、39歳で「Jリーガーになる」と宣言した男がいます。安彦考真さんです。2018年に40歳でJ2クラブと契約すると、翌年41歳でジーコの持つJリーグ最年長デビュー記録を更新。年俸はわずか10円、その後も120円という異例の契約でも話題になりました。2020年に42歳でサッカー選手を引退した後は、なんと格闘家に転身。RISEのリングでデビュー戦をKO勝ちで飾り、白星も黒星も経験しながら、今なおRIZIN出場を目指し続けています。「職業:挑戦者」と呼ばれるその異色すぎるセカンドキャリアを、全盛期から現在まで振り返ります。
01安彦考真のプロフィール
- 本名
- 安彦 考真(あびこ たかまさ)
- 生年月日
- 1978年2月1日(48歳)
- 出身地
- 神奈川県相模原市
- 元プロ経歴
- Y.S.C.C.横浜(Jリーグ)
- Jリーグ在籍
- 2018年〜2020年(40〜42歳)
- 記録
- Jリーグ最年長デビュー記録(41歳1か月9日、当時)
- 現在の肩書き
- 格闘家/挑戦投資事業家・講演家
- 所属
- RISE(立ち技打撃格闘技)
2026年で48歳。サッカー選手として異例の記録を打ち立てただけでなく、その後さらに格闘家に転身するという、なかなか他に例のないキャリアを歩んでいる方です。
02全盛期の活躍――J最年長デビューまでの道のり
高校時代からブラジルへ、そして挫折
安彦さんは神奈川県相模原市の出身。麻布大学附属渕野辺高等学校のセレクションに合格したものの推薦入学が叶わず、神奈川県立新磯高等学校へ進学しました。高校3年生のときにブラジルの日本ミナスFCへ留学し、本場のサッカーで生計を立てる厳しさと魅力を肌で感じたといいます。
高校卒業後、再びブラジルに渡りグレミオ・マリンガと契約。しかしリーグ戦開幕直前に前十字靱帯を断裂するという大きなケガに見舞われ、志半ばで帰国することになります。帰国後は清水エスパルスやサガン鳥栖の入団テストに挑戦しましたが、いずれも不合格。当時ともにブラジル留学していたエドゥーさんが日本代表スタッフに入ったことも重なり、一度はサッカーの道から離れる決断をしました。
39歳、年収1000万円を捨てての一念発起
サッカーから離れたあとは、一般企業で働きながら安定した生活を送っていた安彦さん。しかし2017年7月、39歳のときに「もう一度Jリーガーを目指す」と宣言し、年収1000万円の仕事を辞めるという大きな決断をします。クラウドファンディングでトレーニング費用を募るなど、周囲を巻き込みながら現役復帰への準備を進めました。
「自分に嘘をついて生きることをやめる」という強い思いのもと、体づくりからやり直し、本気でJリーグの舞台に戻ることを目指したのです。30代後半という年齢での挑戦は、周囲からすれば無謀に映ったかもしれません。それでも安彦さんは、諦めずにトライアウトに挑み続けました。
40歳でJリーガーに、そして最年長デビュー記録更新
宣言から半年あまり、2018年3月に40歳でY.S.C.C.横浜とまさかの契約を締結。当時、年俸はわずか10円という異例の条件でも話題になりました。そして翌2019年3月10日、41歳1か月9日でJリーグ公式戦にデビュー。これは、それまでジーコさんが持っていた40歳2か月13日というJリーグ最年長初出場記録を上回るものでした。
年俸10円から始まったその後の契約は、翌年には「年俸120円」に。金額そのものよりも、「何歳になっても本気で挑戦すればチャンスはつかめる」というメッセージ性が大きな反響を呼び、多くのメディアで取り上げられることになりました。2020年12月、42歳でJリーガーを引退するまでの短い期間でしたが、安彦さんはサッカー界に強烈な足跡を残したのです。
03サッカー選手引退と格闘家への転身
Jリーガーとしてのキャリアを終えた安彦さんですが、そこで挑戦を終わらせなかったのが安彦さんらしいところです。引退のスピーチで「大みそかのRIZINに出ます」と宣言してピッチを去ったと伝えられており、次の目標をすでに格闘技の世界に定めていました。
- 2017年7月39歳、年収1000万円の生活を捨て「Jリーガーになる」と宣言。
- 2018年3月40歳でY.S.C.C.横浜とJ2契約。年俸10円の異例の契約が話題に。
- 2019年3月10日41歳1か月9日でJリーグ公式戦デビュー。ジーコの持つ最年長デビュー記録を更新。
- 2020年12月42歳でJリーガーを引退。引退時に格闘家転身とRIZIN出場を宣言。
- 2021年2月43歳、格闘家になることを正式に宣言。
- 2021年4月16日格闘家としてデビュー戦を行い、KO勝利を収める。
- 2025年6月21日「RISE WORLD SERIES 2025 YOKOHAMA」でチャッピー吉沼さんと対戦、3ラウンドTKO負け。1年ぶりの勝利はならず。
サッカーから格闘技へという転身は、身体の使い方や求められる技術がまったく異なるだけに、簡単なことではありません。それでも安彦さんはデビュー戦をKO勝利で飾り、以降もRISEのリングで挑戦を続けています。
04なぜ40代で格闘家になったのか
「挑戦者」であり続けるための選択
安彦さんが格闘家転身を語る際によく口にするのが、「挑戦者であり続けたい」という思いです。40歳での現役Jリーガー挑戦も、その後の格闘家転身も、根っこにあるのは「年齢を言い訳にしない生き方」を体現するという姿勢だと言えます。安彦さん自身、突然の「格闘家宣言」について、常に挑戦者であり続けるための手段だったと語っています。
Jリーグで最年長デビュー記録を打ち立てたことで一定の役割を果たした、と満足してもよかったはずです。しかし安彦さんはそこで立ち止まらず、まったく畑違いの格闘技という新たな山に登り始めました。この一貫した姿勢が、多くの人に響く理由なのかもしれません。
サッカー経験を活かした異色のファイタースタイル
元サッカー選手が格闘家に転身するケースは決して多くありません。下半身の使い方やフットワークなど、サッカーで培った身体能力を活かしつつ、パンチやキックといった打撃技術をゼロから習得する必要があります。デビュー戦をKO勝利で飾るなど、40代後半になった今もパンチ力のあるファイトを見せていますが、2025年6月の一戦では惜しくもTKO負けを喫するなど、厳しい世界での戦いが続いています。
決して体格に恵まれた「エリート格闘家」ではない安彦さんが、実戦でしっかり結果を出し続けていることは、単なる話題作りではなく本気で格闘技に取り組んでいる証と言えるでしょう。
「挑戦投資事業家」としての顔も
格闘家としての活動と並行して、安彦さんは「挑戦投資事業家」としての顔も持っています。挑戦する人と投資家をマッチングしてマネジメントする事業を手がけ、自身の経験をもとに挑戦することの価値を広める活動にも力を入れています。全国の中学・高校・大学での特別授業や講演会、自治体・企業・スポーツ団体向けの人材教育研修など、講演活動も精力的にこなしています。
サッカー、格闘技、そして講演や事業と、一つの肩書きに収まらない生き方をしているのが、今の安彦さんの特徴と言えそうです。
052026年現在の活動
RISEでの試合とRIZIN出場への挑戦
2026年現在、安彦さんはRISE(ライズ)の立ち技打撃格闘技の舞台で戦い続けています。2025年6月21日に横浜BUNTAIで行われた「RISE WORLD SERIES 2025 YOKOHAMA」では、“不死鳥”の異名を持つチャッピー吉沼さんと対戦。2ラウンドにはバックブローでダウンを奪う見せ場もつくりましたが、その後は吉沼さんに連打を浴びてダウンを重ね、最終的に3ラウンドに左ストレートで沈められTKO負け。約1年ぶりの勝利はなりませんでした。40代後半で世界レベルの打撃系選手と真っ向勝負を挑む姿勢そのものが、多くのファンの心を打っています。
こうした結果を積み重ねながら、安彦さんが公言し続けているのが総合格闘技の頂点、RIZINへの出場です。
「MMAもやれますということを伝えさせていただきました。やるなら相手はやっぱり三浦孝太さんとやりたいという話もしました」 出典:日刊スポーツ(Yahoo!ニュース) 2026年5月21日
RIZINの榊原信行CEOに直接対戦を熱望する姿は、48歳になった今も変わらぬ「挑戦者」としての気概を感じさせます。まだ正式な出場決定には至っていませんが、大晦日のRIZINでのリング入りという目標に向けて、活動を続けている段階です。
CCO(チーフカルチャーオフィサー)としての肩書きも
X(旧Twitter)のプロフィールでは「CCO(Chief Culture Officer)/Road to RIZIN 2026」と名乗っており、格闘家としての活動を続けながら、企業文化に関わる役職も担っていることがうかがえます。サッカー選手、格闘家、そしてビジネスパーソンとしての顔を同時に持つという、非常にユニークなキャリアを歩んでいます。
ワクセルなど講演・トークイベントでの発信
格闘家デビュー以降、安彦さんは講演家・コラボレーターとして「ワクセル」のトークセッション企画にもたびたび登場しています。「1ラウンドKO勝ちでプロ格闘家デビューを果たした”挑戦者”安彦考真さんが語る格闘技の世界」といったテーマで、自身の経験をもとに挑戦することの意味を語るイベントも開催されました。2024年には「進化し続けるためのマイルール」と題した個人参加型セミナーを全4回にわたって開催するなど、自らの言葉で「挑戦」を伝える活動にも継続的に取り組んでいます。
サッカーと格闘技という二つの畑で結果を出してきた経験は、講演の説得力にもつながっているのでしょう。全国の学校や企業からの講演依頼も途切れず続いているようです。
「お前らサラリーマンか」――サッカー界への提言も
格闘技の世界に身を置くようになった今も、安彦さんはサッカー界への関心を失っていません。現役時代の経験を踏まえ、サッカー選手のセカンドキャリアやマインドセットについて、率直な提言をメディアで発信することもあります。自身が身をもって示した「年齢を言い訳にしない」という生き方は、現役選手や引退後の選手たちへのメッセージとしても注目されています。
06まとめ
40歳での現役Jリーガー挑戦、そして41歳でのJリーグ最年長デビュー記録更新という前例のない足跡を残した安彦考真さん。42歳での引退後も歩みを止めず、格闘家としてリングに立ち続けているその姿は、多くの人に「挑戦することの意味」を問いかけてきます。
安彦考真 2026年現在まとめ
- 39歳で年収1000万円の生活を捨て、Jリーガーへの再挑戦を宣言
- 2018年に40歳でY.S.C.C.横浜と契約、2019年に41歳でJリーグ最年長デビュー記録を更新
- 2020年に42歳で現役引退、引退スピーチで格闘家転身とRIZIN出場を宣言
- 2021年に格闘家デビューを果たしKO勝利、以降もRISEで試合を重ねる
- 2025年6月のRISE横浜大会ではチャッピー吉沼さんに3ラウンドTKO負け、勝利はならず
- 2026年現在もRIZIN出場を熱望し、榊原CEOに直談判するなど活動を継続
- 挑戦投資事業家・講演家としてもワクセルなどで積極的に発信中
サッカー選手として異例の記録を打ち立て、格闘家としても結果を出し続ける安彦さん。「職業:挑戦者」というその生き方は、これからも新たな話題を生み出してくれそうです。大晦日のRIZINのリングに、その姿が実現する日が来るのか、引き続き注目していきたいですね。