黒いサングラスに細身のスーツ、そして甘くて太いあの声。「ランナウェイ」や「め組のひと」をテレビの前で口ずさんだ方も、90年代に「恋人」や「違う、そうじゃない」をカラオケで歌った方も多いのではないでしょうか。シャネルズ、ラッツ&スター、そしてソロへと、40年以上「ラヴソングの王様」として歌い続けてきた鈴木雅之さん。最近テレビで見る機会が減ったと感じる方もいるかもしれませんが、実は2026年は鈴木さんにとって特別な一年なんです。70歳の古希とソロデビュー40周年のダブルアニバーサリー。この記事では、全盛期の歩みを振り返りながら、2026年現在の活動を詳しくお伝えします。
01鈴木雅之のプロフィール
- 名前
- 鈴木雅之(すずき まさゆき)
- 愛称
- マーチン
- 生年月日
- 1956年9月22日(70歳)
- 出身地
- 東京都大田区大森
- 職業
- 歌手(ボーカリスト)
- グループ
- シャネルズ → ラッツ&スター
- ソロデビュー
- 1986年「ガラス越しに消えた夏」
- 家族
- 実姉は歌手の鈴木聖美さん
大森の中学校出身で、シャネルズを結成したのも地元・大森。故郷とのつながりが今年あらためてクローズアップされています。
02全盛期の活躍――シャネルズからラッツ&スターへ
「ランナウェイ」で鮮烈なデビュー
鈴木雅之さんが仲間たちとシャネルズを結成したのは1975年のこと。アメリカのドゥーワップに憧れた若者たちが、地元・大森で声を合わせたのが始まりでした。そして1980年2月25日、シングル「ランナウェイ」でメジャーデビュー。CMソングとしてお茶の間に流れたこの曲は大ヒットとなり、シャネルズは一躍トップグループの仲間入りを果たします。
当時の日本の歌謡界で、本格的なドゥーワップ・コーラスを前面に出したグループは珍しい存在でした。ベースボーカルの低音、重なり合うハーモニー、そしてその中心で響く鈴木さんのリードボーカル。「洋楽っぽいのに、どこか懐かしい」という独特の魅力が、幅広い世代の心をつかんだのです。
ラッツ&スター改名と「め組のひと」
1983年、グループ名をラッツ&スターに改めます。同年リリースの「め組のひと」は化粧品メーカーのキャンペーンソングとして大ヒット。「め組のひと」は40年以上経った今も、ライブや音楽番組で大合唱が起きる定番曲となっています。そのほか「Tシャツに口紅」など、大人の色気を感じさせる名曲も残しました。
姉・鈴木聖美さんとの「ロンリー・チャップリン」
ラッツ&スターの活動と並行して生まれた名曲が、実姉・鈴木聖美さんとの「ロンリー・チャップリン」です。「鈴木聖美 with RATS&STAR」名義で1987年に届けられたこの曲は、今やデュエットソングの定番として世代を超えて歌い継がれています。姉弟で声を重ねるというスタイルは、のちの鈴木さんの「デュエットの名手」としての顔を予感させるものでもありました。
03ソロ転向とその後の歩み
1986年、鈴木さんは「ガラス越しに消えた夏」でソロボーカリストとしてデビューします。収録した1stアルバム『mother of pearl』は、グループ時代とはまた違う、都会的で洗練されたサウンドが印象的でした。続いて2ndアルバム『Radio Days』、3rdアルバム『Dear Tears』とリリースを重ねていきます。
ただ、順風満帆だったわけではありません。2026年9月の誕生日ライブで鈴木さん自身が振り返ったところによると、ソロデビューしてしばらくは全国ツアーを行うことができなかったのだそうです。そして1993年の「恋人」のリリースによって、ようやく「ソロシンガーとして認められた」と語っています。人気グループのボーカリストというイメージから抜け出すのは、想像以上に大変なことだったのかもしれませんね。
その後は「違う、そうじゃない」「もう涙はいらない」など90年代にヒットを連発。2010年代には賞レースでも評価され、2011年には初のカヴァーアルバムで日本レコード大賞の優秀アルバム賞、2016年には最優秀歌唱賞、2017年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しています。そして還暦を過ぎた2019年、まさかの「アニソン」という新たな扉が開くことになります。
- 1975年地元・大森でシャネルズを結成。
- 1980年2月「ランナウェイ」でメジャーデビュー。大ヒットを記録。
- 1983年グループ名をラッツ&スターに改名。「め組のひと」がヒット。
- 1986年「ガラス越しに消えた夏」でソロデビュー。
- 1993年「恋人」をリリース。ソロシンガーとしての評価を確立。
- 2016年日本レコード大賞・最優秀歌唱賞を受賞。
- 2019年TVアニメ『かぐや様は告らせたい』のOPテーマで初のアニメ主題歌を担当。
- 2020〜2023年NHK紅白歌合戦に4年連続出場。
- 2025年4月シャネルズデビュー45周年記念ベスト『All Time Doo Wop ! !』をリリース。
- 2026年3月デュエットベスト『MARTINI DUET DELUXE』をリリース。
- 2026年9月70歳の誕生日に東京国際フォーラムでバースデーライブを開催。
04深掘り――デュエットの名手としての顔
「渋谷で5時」から始まる名デュエットの系譜
鈴木雅之さんを語るうえで欠かせないのが「デュエット」です。姉・聖美さんとの「ロンリー・チャップリン」に続き、1993年には菊池桃子さんとの「渋谷で5時」がヒット。待ち合わせの情景を軽やかに歌ったこの曲は、平成を象徴するデュエットソングとして今もカラオケで愛されています。
男女の掛け合いを聴かせるには、相手の声を引き立てる包容力が必要です。鈴木さんの低く温かい声は、相手が誰であっても自然に寄り添い、曲全体をドラマティックに仕上げてしまう。「デュエット相手に指名したい歌手」として名前が挙がり続けるのは、そんな懐の深さゆえでしょう。
「アニソン界の大型新人」というセルフプロデュース
2019年、TVアニメ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』のオープニングテーマに「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」が起用されました。作詞・作曲はいきものがかりの水野良樹さん。「No.1ラブコメの主題歌をラヴソングの王様に歌ってほしい」というアニメ制作側の強い希望から実現した企画で、音楽活動39年目にして初のアニメ主題歌だったそうです。
これが大きな話題となり、続く第2期では「DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」を担当。鈴木さんはその後もシリーズのオープニングテーマを歌い続け、自らを「アニソン界の大型新人」と称してネットの「歌ってみた」動画を楽しむ様子も報じられました。若い世代が「かぐや様の人」として鈴木さんを知り、そこから「め組のひと」へとさかのぼっていく。デュエットという得意分野を武器に、まったく新しいファン層を開拓したのは見事というほかありません。
紅白4年連続とドゥーワップへの原点回帰
アニソンのヒットも追い風となり、2020年から2023年まではNHK紅白歌合戦に4年連続で出場。2023年にはアルバム『SOUL NAVIGATION』、2024年には『Snazzy』をリリースし、ツアーは全公演ソールドアウトになったと公式プロフィールに記されています。
2025年4月には、シャネルズデビュー45周年を記念したベストアルバム『All Time Doo Wop ! !』を発表。シャネルズ・ラッツ&スター時代のオリジナル曲に加え、幾田りらさん、岡崎体育さん、こっちのけんとさん、GRe4N BOYZ、吉岡聖恵さんらが参加したトリビュート盤も収録され、「め組のひと(2025 Ver.)」の配信も行われました。原点であるドゥーワップを次の世代へ手渡す、そんな意志が感じられる作品です。
052026年現在の活動
デュエットベスト『MARTINI DUET DELUXE』と令和版「渋谷で5時」
古希とソロ40周年の幕開けとなったのが、2026年3月25日発売のデュエットベストアルバム『MARTINI DUET DELUXE』です。“デュエット”に特化した3枚組で、『かぐや様は告らせたい』シリーズのオープニング主題歌も全曲収録されています。
目玉は、渋谷凪咲さんを迎えて33年ぶりに再録した「渋谷で5時(2026 Ver.)feat. 渋谷凪咲」。渋谷さんにとってはNMB48卒業後初の音源化となり、3月14日に先行配信がスタート。渋谷の街を舞台にしたミュージックビデオも公開されました。かつて菊池桃子さんと歌った曲を、令和の”渋谷さん”と歌い直すという遊び心も鈴木さんらしいですね。リリースに先立ち、3月にはビルボードライブ横浜・東京で「MARTINI DUET DELUXE NIGHT」も開催されています。
地元・JR大森駅で1年間の時報アナウンス
意外なところで鈴木さんの声が聞けるのが、故郷・大森の駅です。1876年に開業したJR大森駅が2026年6月12日に開業150年を迎えたことを記念し、鈴木さんによる時報アナウンスが約1年間の期間限定で放送されています。7時から22時まで毎時0分に、鈴木さんの肉声メッセージとともに、時間帯ごとに「違う、そうじゃない」「ロンリー・チャップリン」「め組のひと」「夢で逢えたら」が流れるという粋な企画です。開始直後には駅構内に等身大パネルや顔はめパネルのフォトスポットも設置されました。公式Xでは、地元の皆さんへのあいさつが投稿されています。
30都市38公演の全国ツアーと70歳のバースデーライブ
6月14日の千葉・市川市文化会館を皮切りに、全国ツアー「masayuki suzuki taste of martini tour 2026 Step123 season2 “70 / 40th anniversary”」がスタートしました。公式スタッフアカウントによれば30都市38公演という大規模なもので、姉の鈴木聖美さんも出演しています。10月16日のロームシアター京都、10月28日の愛知県芸術劇場など、11月まで各地を回る予定です。70歳でこの本数は、正直驚きですよね。
ハイライトとなったのが、70歳の誕生日当日の9月22日に行われた東京国際フォーラム ホールA公演。WOWOWで生中継されたこのステージには満員の約5千人が詰めかけ、聖美さんに加え、伊原六花さん、篠原涼子さん、渋谷凪咲さん、鈴木愛理さん、野宮真貴さんの6人の”ディーヴァ”が登場しました。篠原涼子さんとはレーベルメイトでありながら、今年ついにデュエットが実現したそうです。公演は約2時間50分、全23曲。アンコールではラッツ&スターの佐藤善雄さん、桑野信義さんも加わって「め組のひと」を披露し、バースデーケーキのサプライズに会場全体の「Happy Birthday」の大合唱と、まさに祝祭の一夜になりました。
MCでは、ソロ初期の苦労を振り返りつつ、70歳を迎えた心境をこう語っています。
これからは誰のために生きるのかが大事になる 出典:WOWOW ニュース 2026年9月24日
また、誕生日当日にはソロデビュー40周年と古希を記念したアナログ盤BOX『MARTINI RECORDS COLLECTION』(完全生産数量限定)も発売。『mother of pearl』『Radio Days』の復刻に、『Dear Tears』の初アナログ化、近年のヒット曲を集めた新規盤を加えた4枚組で、アナログ世代のファンにはたまらない内容です。
年末はホテルディナーショーで姉弟共演
ツアーを終えた後も、鈴木さんの2026年はまだ続きます。12月10日から25日にかけては「鈴木雅之 2026 X’mas Private Hotel Tour “70/40th anniversary” Co-starring 鈴木聖美」を開催予定。ホテル日航福岡、神戸ポートピアホテル、ウェスティン都ホテル京都、ヒルトン東京お台場、帝国ホテル大阪などを巡る、姉弟共演のクリスマスディナーショーです。大人の夜を彩るラヴソングの王様らしい締めくくりになりそうです。
なお、公式のXやInstagramに加えTikTokアカウントも開設されており、ツアーの様子などがスタッフアカウントから発信されています。
06まとめ
「最近見かけない」どころか、鈴木雅之さんは70歳を迎えた2026年に、キャリア最大級とも言える活動量を見せています。デュエットベストのリリース、全国38公演のツアー、地元駅の時報、そして年末のディナーショー。シャネルズ時代から変わらないドゥーワップへの愛と、相手の声を引き立てるデュエットの妙が、今も鈴木さんの音楽の真ん中にあります。
鈴木雅之 2026年現在まとめ
- 2026年は古希(70歳)とソロデビュー40周年のダブルアニバーサリー
- 3月にデュエットベスト『MARTINI DUET DELUXE』を発売、「渋谷で5時」を渋谷凪咲さんと33年ぶりに再録
- JR大森駅の開業150年を記念し、約1年間にわたり時報アナウンスを担当中
- 6月から30都市38公演の全国ツアーを開催、11月まで続く
- 9月22日の誕生日ライブは6人のゲストとラッツ&スターのメンバーが集結、全23曲を披露
- 誕生日にアナログBOX『MARTINI RECORDS COLLECTION』を発売
- 12月には鈴木聖美さんとのクリスマスホテルツアーを予定
「ランナウェイ」から46年。ソロ初期にはツアーさえ組めなかった時期を乗り越え、還暦を過ぎてアニソンで新しいファンと出会い、古希の誕生日に5千人の大合唱に包まれる。そんな鈴木さんの歩みを知ると、あのサングラスの奥の笑顔がますます頼もしく見えてきます。お近くの会場に来る機会があれば、ぜひ一度、生の「め組のひと」を体感してみてはいかがでしょうか。