「若麒麟(わかきりん)」という四股名を覚えている相撲ファンの方も多いのではないでしょうか。闘志あふれる取り口で幕内まで駆け上がりながら、2009年の大麻事件で角界を追われた鈴川真一さん。その後はプロレスラーへ転身し、リング上で再起を図ってきました。一方で薬物をめぐる事件を繰り返し、名前を聞くのはニュースの見出しばかり——そんな印象を持っている方もいるかもしれません。2025年にも大麻リキッド所持の疑いで逮捕され、その後に不起訴となったことが報じられました。ここでは、力士時代の活躍からプロレス転身、そして2026年現在の状況までを、事実をていねいに追いながらまとめます。
01鈴川真一のプロフィール
- 本名
- 鈴川 真一(すずかわ しんいち)
- 四股名
- 若麒麟 真一(わかきりん しんいち)
- 生年月日
- 1983年9月21日(42歳)
- 出身地
- 兵庫県川西市
- 所属部屋
- 押尾川部屋 → 尾車部屋
- 最高位
- 西前頭9枚目(2008年1月場所)
- 主な活動
- 元幕内力士・プロレスラー
- プロレスデビュー
- 2010年9月(IGF)
力士時代は186cm・130kg超の恵まれた体格を武器に土俵で暴れ、プロレス転身後もその巨体でリングに立ってきた人物です。
02力士・若麒麟としての全盛期
押尾川部屋から角界入り
鈴川真一さんが角界入りしたのは1999年3月場所。当初は本名の「鈴川」を四股名として土俵に上がっていました。押尾川部屋に入門したのち、部屋の縮小にともなって尾車部屋へ移籍。恵まれた体格と、前に出る圧力のある相撲で、少しずつ番付を上げていきます。
2004年9月場所で十両に昇進すると、四股名を「若麒麟」に改めました。これは師匠である元関脇・大麒麟にちなんだもので、角界のなかでも由緒のある名跡を受け継いだ形です。
幕下優勝2回、そして新入幕へ
若麒麟さんは幕下時代に2度の優勝(2005年9月場所、2007年5月場所)を果たすなど、地力の高さを見せていました。そして2007年11月場所で待望の新入幕。関取のなかでもトップカテゴリーである幕内の土俵に、ついに足を踏み入れたのです。
翌2008年1月場所には自己最高位となる西前頭9枚目まで番付を上げました。幕内在位こそ3場所と長くはありませんでしたが、通算では279勝232敗(勝率.546)という成績を残しており、けっして一発屋ではなく、実力で番付を積み上げてきた力士だったことがわかります。
「闘志の人」というキャラクター
若麒麟さんの相撲は、体格を活かした押しと、気持ちの前面に出た取り口が持ち味でした。派手なスター力士というより、地道に星を積み上げていくタイプ。ファンからは「これから幕内に定着していくのでは」と期待される、伸びしろのある中堅どころという位置づけだったといえるでしょう。
そんな折に起きたのが、キャリアを根底から覆す事件でした。ここから若麒麟さんの人生は、大きく暗転していきます。
03角界追放とプロレスへの転身
土俵で着実に地歩を固めつつあった若麒麟さんですが、2009年1月、大麻取締法違反の容疑で逮捕されます。ここからの経緯は、事実として時系列で押さえておきましょう。
- 2009年1月30日乾燥大麻を所持していたとして、大麻取締法違反(所持)の現行犯で神奈川県警に逮捕される。現役の幕内力士による事件として大きく報道された。
- 2009年2月日本相撲協会が解雇処分を決定。角界を追われることとなった。
- 2009年4月この事件で懲役10か月・執行猶予3年の有罪判決を受ける。
- 2010年9月25日IGF(イノキ・ゲノム・フェデレーション)でプロレスラーとしてデビュー。リングネームは本名の「鈴川真一」。
- 2017年6月29日IGFを退団。以降はフリーの立場でプロレス活動を続ける。
- 2021年3月JR池袋駅構内で大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の疑いで再び逮捕される。
2009年の事件は、大相撲界で相次いだ大麻問題の象徴的なケースとして扱われました。現役の幕内力士が逮捕され、解雇にまで至ったことは、当時の角界に大きな衝撃を与えたのです。この一件で、鈴川さんは力士としてのキャリアを完全に絶たれることになりました。
格闘の世界での再出発
角界を去った鈴川さんが選んだ再起の場は、プロレスのリングでした。アントニオ猪木さんが主宰していたIGFに参戦し、2010年9月にデビュー。相撲で鍛えた巨体と力を武器に、格闘技色の強いプロレスの舞台で新たなキャリアを歩み始めます。
2017年にIGFを退団したあともフリーとして活動を継続。派手なメインイベンターというわけではありませんでしたが、地方大会や小規模な興行を含めてリングに立ち続け、力士上がりのパワーファイターとして独自のポジションを築いていきました。相撲を追われた人間が、それでも身体を張れる場所を見つけて生きていく——その姿勢自体は、応援していたファンも少なくなかったはずです。
04繰り返された薬物事件
鈴川さんの歩みを語るうえで避けて通れないのが、薬物をめぐる事件です。ここはセンシティブな話題なので、報道された事実にもとづいて、確定・未確定を分けながら整理します。
2009年・2021年の逮捕
まず1度目は、前章でも触れた2009年1月の逮捕です。現役の幕内力士だった鈴川さんが乾燥大麻を所持していたとして現行犯逮捕され、この件では執行猶予付きの有罪判決が確定しています。角界解雇の直接の原因となった事件でした。
2度目は2021年3月。JR池袋駅構内で大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の疑いで逮捕されています。プロレスラーとして活動を続けるなかでの再びの事件であり、報道でも大きく取り上げられました。
2025年の逮捕と、その後の不起訴
そして直近の出来事が、2025年の逮捕です。報道によると、鈴川さんは2025年5月中旬、東京都新宿区の路上に止めた車内で、大麻の成分を液体にした「大麻リキッド」約0.1グラムを所持していた疑いがあるとされ、警視庁新宿署が10月16日付で麻薬取締法違反(所持)の疑いで逮捕したと伝えられました。パトロール中の警察官による職務質問がきっかけだったといいます。
大麻リキッド所持容疑で元力士逮捕=「合法と思った」 出典:時事通信 2025年10月17日
捜査関係者への取材として、鈴川さんが「(所持していたものは)合法だと思った」と供述し、容疑を否認していたと各社が報じています。ここで大切なのは、この2025年の件について鈴川さんが有罪と確定したわけではないという点です。
その後、東京地検は2025年11月27日、この麻薬取締法違反(所持)の疑いで逮捕された鈴川さんを不起訴処分としました。検察は不起訴の理由を明らかにしていません。
東京地検は27日、麻薬取締法違反(所持)の疑いで逮捕された元力士「若麒麟」の鈴川真一さんを不起訴とした。理由は明らかにしていない。 出典:共同通信(秋田魁新報ほか掲載)2025年11月27日
不起訴となった以上、2025年の件について鈴川さんを「有罪」と決めつけることはできません。あくまで逮捕された事実と、その後に不起訴となった事実を、そのまま受け止めるべきところです。過去に有罪が確定した2009年の件とは、性格が異なることを区別しておく必要があります。
依存という難しさ
薬物にまつわる事件が繰り返されてきた背景には、依存という問題の根深さがあると指摘されることもあります。薬物依存は本人の意志の弱さだけで説明できるものではなく、専門的な治療や支援を要する健康上の課題だという理解が、近年は広がってきました。鈴川さんの一連の経緯を、単に「また事件を起こした人」と切り捨てるのではなく、そうした背景も含めて冷静に見ていく必要があるのかもしれません。
052026年現在の状況
プロレスラーとしての活動
2025年の逮捕当時、鈴川さんはプロレスラーとして活動を続けている最中でした。報道によれば、逮捕の直後にあたる2025年5月には、東京・杉並区の団体「C.A.C.C.スネークピットジャパン」の興行への出場が予定されていたものの、事件のため欠場を余儀なくされたと伝えられています。団体の代表者も、残念な理由での欠場となったことについてコメントを出していました。
つまり2025年の時点でも、鈴川さんは相撲を離れたあとの居場所として、プロレスや格闘技の世界に軸足を置き続けていたことがうかがえます。
不起訴後の去就
2025年11月27日に不起訴処分となったことで、鈴川さんは身柄を拘束された状態からは解放されました。ただし、2026年7月現在、その後の具体的な活動再開や今後の予定について、大手メディアで大きく報じられている確たる情報は見当たりません。復帰興行の告知や、まとまったインタビューといった動きも、現時点では確認できていない状況です。
このあたりは、無理に推測で埋めるべきところではないでしょう。相撲・プロレスという身体を張る世界で生きてきた人だけに、リングに戻る可能性もゼロではありませんが、あくまで今後の発信を待つほかありません。
SNSでの発信について
鈴川さんはX(旧Twitter)にアカウント(@__Suzukawa__)を持っているとされています。ただし本稿の作成時点では、その投稿内容や更新状況を確実に裏取りすることができませんでした。本人公式であることと、具体的な発信内容の双方を確認できないため、ここでは投稿の引用や埋め込みは差し控えます。最新の近況は、確認が取れ次第あらためて追記したいところです。
06まとめ
若麒麟として幕内まで上り詰めながら、大麻事件で角界を追われ、プロレスの世界で再起を図ってきた鈴川真一さん。その道のりは決して平坦ではなく、薬物をめぐる事件を繰り返してきたことも事実として残っています。一方で、2025年の逮捕については不起訴となっており、その件を有罪と決めつけることはできません。
鈴川真一 2026年現在まとめ
- 元幕内力士「若麒麟」。最高位は西前頭9枚目(2008年1月場所)
- 2009年1月、乾燥大麻所持で逮捕され、相撲協会を解雇。この件は有罪が確定
- 2010年にIGFでプロレスデビュー、2017年退団後もフリーで活動
- 2021年3月、池袋駅での大麻所持で再び逮捕
- 2025年10月、新宿区での大麻リキッド所持容疑で逮捕されるも容疑を否認
- 2025年11月27日、東京地検がこの件を不起訴処分に。理由は非公表
- 2026年7月現在、不起訴後の具体的な活動再開に関する確たる報道は見当たらない
土俵で見せた闘志、そしてリングでの再出発。そのたびに事件でつまずいてきた歩みは、多くの人にとって複雑な思いを抱かせるものです。ただ、事実は事実として淡々と受け止めつつ、これからの鈴川さんの動向は、確かな情報にもとづいて静かに見守っていきたいと思います。