「冬の稲妻」のあのイントロ、「チャンピオン」のサビで拳を握った記憶。あるいは年末時代劇『白虎隊』で流れた「愛しき日々」や、テレビドラマ『はぐれ刑事純情派』の主題歌で、少しかすれた温かい歌声に心を持っていかれた方も多いのではないでしょうか。フォークグループ・アリスのメンバーとして、そしてソロ歌手として、昭和から平成にかけて長くヒットを届けてきたのが堀内孝雄さん、愛称「ベーヤン」です。2023年には盟友・谷村新司さんが亡くなり、「ベーヤンは今どうしているんだろう」と気になっていた方もいるはず。実は2026年の堀内さんは、歌手生活55周年を記念したコンサートで全国を回り、テレビの歌番組にも元気な姿を見せています。この記事では、全盛期の歩みから谷村さんとの別れ、そして最新の活動までをじっくりたどっていきます。

01堀内孝雄のプロフィール

名前
堀内孝雄(ほりうち たかお)
愛称
ベーヤン
生年月日
1949年10月27日(76歳)
出身地
大阪府
職業
歌手、作曲家、俳優
デビュー
1972年(アリスとして)
所属グループ
アリス(谷村新司さん・矢沢透さんと)
主な受賞
第32回日本レコード大賞 歌謡曲・演歌部門 大賞(1990年「恋唄綴り」)

フォークとロックのアリス、歌謡曲と演歌のソロ。二つの顔をどちらも代表作で語れる歌手は、そう多くありません。

02全盛期の活躍――アリスからソロへ

アリス結成と「冬の稲妻」「チャンピオン」の時代

堀内孝雄さんの音楽人生の出発点は、フォークグループ・アリスです。1971年、谷村新司さんと堀内さんを中心にグループが結成され、ドラムの矢沢透さんが加わって3人体制となり、1972年にシングル「走っておいで恋人よ」でデビューしました。

最初から順風満帆だったわけではなく、ライブハウスや全国の会場を地道に回る日々が続きます。そこで鍛えられた演奏とステージングが花開いたのが1970年代後半でした。1976年の「遠くで汽笛を聞きながら」、1977年の「冬の稲妻」、そして1978年の「チャンピオン」と、いまも歌い継がれる名曲が次々に生まれます。とくに「チャンピオン」は、ボクサーの栄光と衰えを描いたドラマチックな歌詞と、ステージで3人が全身で鳴らすサウンドが重なって、アリスを国民的なバンドへと押し上げました。

谷村さんの骨太な歌声と、堀内さんのハイトーンで伸びやかな声。この2つが重なるハーモニーこそ、アリスの代名詞でした。

「君のひとみは10000ボルト」でソロでも大ヒット

アリスとして人気の絶頂にあった1978年、堀内さんはソロ名義でも「君のひとみは10000ボルト」を発表します。化粧品のCMソングとして使われたこの曲は大ヒットとなり、「アリスの堀内」だけでなく、一人のシンガーとしての存在感を世間に強く印象づけました。

アリスは1981年に活動停止を発表し、同年11月、後楽園球場での公演をもってひとつの区切りを迎えます。北京や香港、バンコクでの海外公演も行い、まさに頂点で幕を引いた形でした。

「愛しき日々」で歌謡曲の世界へ

アリスの活動停止後、堀内さんはソロ歌手として独自の道を歩み始めます。大きな転機になったのが、1986年発売の「愛しき日々」でした。作詞は小椋佳さん、作曲は堀内さん自身。日本テレビ系の年末時代劇スペシャル『白虎隊』の主題歌として起用され、若くして散った少年たちの物語と、しみじみとした歌声が重なって、多くの視聴者の涙を誘いました。

ここから堀内さんは、フォークやロックとはまた違う、大人の哀愁を描く歌謡曲の世界で存在感を増していきます。フォーク出身の歌い手が歌謡曲で成功するという流れを、堀内さんはごく自然に体現していきました。

「恋唄綴り」で日本レコード大賞

ソロとしての頂点ともいえるのが1990年の「恋唄綴り」です。作詞は荒木とよひさ、作曲は堀内さん。もともとは1989年に別の歌手へ提供した楽曲を、堀内さん自身がセルフカバーしてシングルとして発売したものでした。

この曲で堀内さんは、1990年の第32回日本レコード大賞で歌謡曲・演歌部門の大賞を受賞。同じ年には日本歌謡大賞や日本有線大賞でも大賞に輝き、まさに「賞レースを総なめ」と言っていい一年になりました。年末のNHK紅白歌合戦でもこの曲を披露し、アリス時代とはまた違う、ソロ歌手・堀内孝雄の代表作として定着していきます。

さらに1988年から2005年にかけては、テレビ朝日系の人気ドラマ『はぐれ刑事純情派』の主題歌を長年にわたって担当。「影法師」をはじめ、シリーズごとに書き下ろされた主題歌の数々で、毎週のように茶の間に堀内さんの歌声が届いていました。同作には俳優としても出演しており、「歌もドラマも」の顔を持つ存在になっていきます。

03盟友との別れとその後

アリス、何度も再始動した50年

1981年に活動を止めたアリスですが、その歴史はそこで終わりませんでした。1987年にはアルバム『ALICE X』とシングル「BURAI」で再び3人がそろい、その後も節目ごとに再始動を繰り返します。2000年には阪神・淡路大震災のメモリアルコンサートを神戸で開き、同年末にはNHK紅白歌合戦にもアリスとして出場しました。

2013年には全国47都道府県を回るツアーを行い、日本武道館でファイナルを迎えています。そして2022年、結成から50周年という大きな節目を迎え、3人はこの先の10年を見据えたプロジェクトも打ち出していました。ソロ活動とアリスを行き来しながら、堀内さんは常に「現役の歌い手」であり続けたのです。

2023年、谷村新司さんとの別れ

その歩みに大きな区切りが訪れたのが2023年でした。同年10月8日、アリスのリーダーとして半世紀にわたり行動を共にしてきた谷村新司さんが74歳で亡くなったことが公表されます。訃報を受けて、堀内さんと矢沢透さんは連名で追悼のコメントを発表し、ずっと一緒に音楽活動ができたことへの感謝をつづりました。

20代の頃から同じステージに立ってきた盟友を失った喪失感は、私たちには想像しきれないものがあります。それでも堀内さんは歌うことをやめませんでした。

2024年、谷村さんの声と共に立った追悼公演

2024年には、谷村新司追悼特別企画として「アリス コンサート2024 ALICE FOREVER~アリガトウ~」を開催。9月18日に日本武道館、10月13日に大阪城ホールという、アリスにとって縁の深い大会場でのステージでした。

この公演では、ステージに立つ堀内さんと矢沢さんの演奏に、生前の谷村さんの歌声と映像をシンクロさせるという演出がとられ、「チャンピオン」を含む全21曲が披露されました。3人がもう一度そろったかのような、2日限りの特別な時間だったと伝えられています。

同じ2024年9月には、堀内さんと矢沢さんがそろってテレビ朝日系『徹子の部屋』に出演し、谷村さんとの思い出や今後の活動について語っています。また追悼公演を終えたあと、矢沢さんは「2人だけでもアリスだ」という趣旨の言葉で気持ちの区切りを語ったと報じられました。

  • 1971年谷村新司さんとアリスを結成。のちに矢沢透さんが加わり3人体制に。
  • 1972年シングル「走っておいで恋人よ」でアリスとしてデビュー。
  • 1978年アリス「チャンピオン」が大ヒット。ソロでも「君のひとみは10000ボルト」をヒットさせる。
  • 1981年11月アリスが後楽園球場公演をもって活動停止。以後ソロ活動が本格化。
  • 1986年10月「愛しき日々」発売。年末時代劇『白虎隊』主題歌に。
  • 1990年12月「恋唄綴り」で第32回日本レコード大賞 歌謡曲・演歌部門の大賞を受賞。
  • 1988〜2005年ドラマ『はぐれ刑事純情派』の主題歌を長年担当。
  • 2022年アリス結成50周年。
  • 2023年10月盟友・谷村新司さんが74歳で死去。矢沢さんと連名で追悼コメントを発表。
  • 2024年4月約6年ぶりのシングル「青二才~わが友よ」を発売。
  • 2024年9〜10月日本武道館・大阪城ホールで谷村さんの追悼コンサートを開催。
  • 2026年歌手生活55周年記念コンサート「遠くで汽笛を聞きながら」を全国で開催。

04作曲家としての堀内孝雄

自分で書き、自分で歌うメロディーメーカー

堀内さんを「歌い手」としてだけ見ていると、見落としてしまう顔があります。それが作曲家としての才能です。ここまで紹介した「愛しき日々」「恋唄綴り」は、どちらも作曲は堀内さん自身。小椋佳さんや荒木とよひさといった名だたる作詞家の言葉に、自らメロディーをつけて歌ってきました。

2022年に放送された歌謡ポップスチャンネルの番組では、50年のキャリアを振り返り、名だたる作詞家たちと勝負してきたという趣旨の話をしています。作詞家の言葉と真正面から向き合い、それにふさわしいメロディーで応える。そんな職人的な姿勢が、堀内さんの楽曲の土台にあるのでしょう。

山口百恵さんの「愛染橋」、五木ひろしさんの「山河」

ほかの歌手への楽曲提供でも、堀内さんは大きな足跡を残しています。よく知られているのが、山口百恵さんが歌った「愛染橋」。大阪の情景を思わせるこの曲は、百恵さんの楽曲の中でも根強い人気を持つ一曲です。

また、五木ひろしさんの「山河」も堀内さんの作曲です。前述の番組で堀内さんは、この曲のために2パターンのメロディーを用意したことや、イントロの楽器の使い方まで細かくこだわったことを明かしています。五木さんがNHK紅白歌合戦の大トリでこの曲を歌った姿を見て、胸が熱くなったというエピソードも語られました。自分が歌わない曲にも、ここまで心を注いでいたのかと驚かされます。

世代をつなぐ「青二才~わが友よ」

2024年4月17日には、約6年ぶりとなるシングル「青二才~わが友よ」を発売しました。作詞は石原信一さん、作曲は堀内さん。50代から70代まで幅広い世代に向けた応援歌として企画された一曲です。

そしてカップリングの「ユズリハ」は、作詞が谷村新司さん、作曲が堀内さんという、アリスの2人による共作です。谷村さんが亡くなったあとに世に出たこの組み合わせに、特別な思いを抱いたファンも多かったのではないでしょうか。

052026年現在の活動

歌手生活55周年コンサート「遠くで汽笛を聞きながら」

2026年の堀内さんの活動の柱になっているのが、「55th Anniversary 堀内孝雄 コンサート 2026~遠くで汽笛を聞きながら~」です。タイトルに掲げられたのは、アリス時代の1976年の名曲。ソロ歌手としての歩みだけでなく、アリスの時代も丸ごと抱えて55周年を迎える、という意思表示のようにも感じられます。

公演は年明けから全国各地で続いています。2月15日には岐阜のぎふしんフォーラム、6月13日には茨城の大正ホール龍ヶ崎、9月には東京のルネこだいら(9月5日)、横浜の関内ホール(9月18日)、品川のきゅりあん(9月26日)と、各地のホールを巡ってきました。関内ホールの公演案内では、アリスとソロの両方から名曲を届けるステージとして紹介されています。埼玉の入間市ではアコースティック編成の公演も組まれるなど、会場に合わせて形を変えながら歌い続けているようです。

76歳にして、これだけの本数を全国で歌い切る体力と気力。ファンにとっては、本当に頼もしい限りですね。

誕生日当日のビルボードライブ大阪

10月27日、77歳の誕生日当日には、ビルボードライブ大阪で「堀内孝雄 アコースティックライブ2026~77th Birthday Live~」が開催されます。1日2回公演で、故郷・大阪での誕生日ライブという特別な一夜になりそうです。同会場では2025年にもアコースティックライブを行っており、恒例の舞台になりつつあります。

告知記事では、このステージの魅力が次のように紹介されています。

優しく温もりにあふれる歌声と、円熟味を増したフォーキーな響きに包まれる贅沢なひととき 出典:Real Sound 2026年6月11日

大ホールでのバンド編成とはまた違う、アコースティックならではの距離の近さ。若い頃のハイトーンとは違う「円熟味」の歌声を、間近で味わえる貴重な機会です。

矢沢透さんと再び同じステージへ

年末には、12月18日にウェスティン都ホテル京都でクリスマスディナーショーが予定されています。注目は、スペシャルゲストとして矢沢透さんが出演すること。ホテル側の告知では、アリス時代の名曲が「ふたりのステージ」で新たに響く、と紹介されています。

谷村さんを見送ったあとも、2人のアリスとしての時間は続いています。9月23日には、大阪城ホールで毎年開かれているフォークの祭典LIVE『君と歩いた青春』2026にも、伊勢正三さんやイルカさん、杉田二郎さんらとともに出演。1970年代のフォーク全盛期を支えた仲間たちとの共演も、堀内さんにとって大切な場所になっているようです。

テレビの歌番組にも元気な姿

テレビでも堀内さんの姿を見る機会は少なくありません。2026年2月1日には神奈川県相模原市から放送された『NHKのど自慢』にゲスト出演し、「聖橋の夕陽」を披露。8月23日には北海道岩内町からの同番組に再びゲストとして登場し、『はぐれ刑事純情派』の主題歌でもあった「影法師」を歌っています。

出場者の歌に耳を傾け、自らもゲストとして名曲を届ける姿は、まさに「お茶の間の歌い手」そのもの。歌番組で久しぶりに見かけて「ベーヤン、変わらないなあ」と感じた方も多かったのではないでしょうか。

06まとめ

アリスで「冬の稲妻」「チャンピオン」を歌い、ソロでは「愛しき日々」「恋唄綴り」で歌謡曲の頂点に立った堀内孝雄さん。作曲家としても「愛染橋」「山河」といった名曲を生み出し、半世紀以上にわたって日本の歌の世界を支えてきました。2023年に盟友・谷村新司さんを見送ったあとも歩みを止めず、2026年は歌手生活55周年のコンサートで全国を巡っています。

堀内孝雄 2026年現在まとめ

  • 歌手生活55周年記念コンサート「遠くで汽笛を聞きながら」を岐阜・茨城・東京・横浜など全国で開催
  • 10月27日、77歳の誕生日当日にビルボードライブ大阪でアコースティックライブを開催予定
  • 12月18日のウェスティン都ホテル京都のディナーショーに矢沢透さんがスペシャルゲスト出演予定
  • 9月には大阪城ホールのフォークの祭典『君と歩いた青春』2026に出演
  • 2026年2月と8月に『NHKのど自慢』へゲスト出演し「聖橋の夕陽」「影法師」を歌唱
  • 2024年には谷村新司さんの追悼コンサートを日本武道館・大阪城ホールで開催

「遠くで汽笛を聞きながら」をタイトルに掲げた55周年の旅は、アリスの時代もソロの時代も、そして谷村さんとの思い出も、すべてを連れて歩くステージなのかもしれません。77歳を目前にしても、各地のホールで、テレビで、変わらぬ温かい歌声を届けているベーヤン。お近くで公演があれば、あの頃の歌をもう一度、生で味わってみてはいかがでしょうか。