赤と白のセーラー服、指をさす振り付け、そして夕方のアニメから流れてくるあの明るいイントロ。1980年代半ばに小学生・中学生だった方なら、「うしろゆびさされ組」というちょっと変わった名前を一度で覚えてしまったのではないでしょうか。おニャン子クラブの高井麻巳子さんと岩井由紀子さんの2人が組んだこのユニットは、活動期間わずか1年半で6枚のシングルを放ち、アニメ『ハイスクール!奇面組』とともに時代の空気そのものになりました。2人はその後そろって芸能界を離れ、長く表舞台にいません。それなのに2026年、このユニット名がまた大きな話題になりました。何が起きているのか、順番に見ていきましょう。
01うしろゆびさされ組のプロフィール
- ユニット名
- うしろゆびさされ組(うしろゆびさされぐみ)
- メンバー
- 高井麻巳子(おニャン子クラブ会員番号16番)/岩井由紀子・愛称ゆうゆ(会員番号19番)
- 結成
- 1985年9月30日
- 解散
- 1987年4月5日(高井麻巳子のおニャン子クラブ卒業にともなう)
- 出身
- フジテレビ「夕やけニャンニャン」/おニャン子クラブ
- レーベル
- キャニオン・レコード
- 作品数
- シングル6枚、オリジナルアルバム2枚(ほかベスト盤)
- 代表曲
- 「うしろゆびさされ組」「バナナの涙」「象さんのすきゃんてぃ」
- 高井麻巳子
- 1966年12月28日生まれ(2026年8月時点で59歳)/福井県小浜市出身
- 岩井由紀子
- 1968年5月26日生まれ(2026年8月時点で58歳)/神奈川県横浜市出身
実質1年半でシングル6枚という密度に、改めて驚かされますね。
02全盛期の活躍――奇面組とともに駆けた18か月
アニメの主題歌ユニットとして生まれた
うしろゆびさされ組は「人気メンバー2人を選んでユニットにしよう」という発想から生まれたグループではありません。出発点はアニメでした。1985年秋に放送が始まったフジテレビ系のアニメ『ハイスクール!奇面組』の主題歌を担当するユニットとして、おニャン子クラブの中から高井麻巳子さんと岩井由紀子さんが選ばれたのです。
ユニット名も秋元康さんとアニメ側のスタッフが一緒に考えたもので、フルーツ系の名前など複数の候補があった末に「うしろゆびさされ組」に落ち着いたと伝えられています。デビュー曲「うしろゆびさされ組」は1985年10月5日発売。作詞・秋元康さん、作曲・後藤次利さんという、当時のおニャン子系を支えた黄金コンビの手によるものです。この曲はオリコン週間チャートで最高5位、1985年の年間ランキングでも83位に入り、ユニットは初っ端からヒットを当ててしまいました。
2枚目「バナナの涙」でオリコン1位
勢いはそこで止まりません。1986年1月21日発売の2枚目「バナナの涙」は、ついにオリコン週間1位を獲得します。本体だけでなく、その中から生まれた2人組までもがチャートの頂点に立ってしまう。「夕やけニャンニャン」がどれほどの熱量を持っていたか、この一点だけでも伝わってくるのではないでしょうか。
続く3枚目「象さんのすきゃんてぃ」(1986年5月2日)が最高4位、4枚目「渚の『・・・・・』」(同年8月27日)が最高5位、5枚目「技ありっ!」(同年11月23日)が最高6位。1987年2月21日の6枚目「かしこ」でシングルは打ち止めとなりました。ほぼ3か月おきに新曲を出しながら、ずっとトップ10圏内。今の感覚で見ても相当な打率です。
赤いセーラー服という強い記号
うしろゆびさされ組を語るとき、多くの人がまず思い出すのがビジュアルです。デビュー曲のジャケットで2人が着ていたのは、『ハイスクール!奇面組』の舞台となる学園の制服をイメージした赤いセーラー服。アニメと現実のアイドルがひとつの絵の中でつながる、いわば元祖メディアミックスの見本のような設計でした。
歌番組でこの衣装が映るたび、子どもはアニメの続きを見ている気持ちになり、大人はアイドルとして受け取る。1曲で二重に届く構造だったわけです。バックコーラスにおニャン子クラブのメンバーが参加していたのも、当時の「みんなで作っている」空気をよく表しています。
アルバム2枚に残る2つの声
オリジナルアルバムも『ふ・わ・ふ・ら』『AN bALANCING TOY』の2枚を1986年に発表しています。高井麻巳子さんの落ち着いた声質と、岩井由紀子さんの明るく通る声。この2つが重なったときの独特のバランスは、今のサブスクで聴き直しても妙にクセになります。
03解散とふたりのその後
うしろゆびさされ組の終わりは、失速でもスキャンダルでもありませんでした。1987年4月5日、高井麻巳子さんがおニャン子クラブを卒業。そのタイミングでユニットも解散、というシンプルな幕引きです。まだ十分に人気があるうちに終わる。これも当時のおニャン子クラブという仕組みの特徴でした。
その後、2人が「うしろゆびさされ組」として並んだのは、1987年9月20日のおニャン子クラブ解散記念コンサートでの一度だけ。以降、公式にこのユニットが再結成されたことはありません。
- 1985年6月岩井由紀子が「夕やけニャンニャン」のオーディションに合格し、おニャン子クラブ会員番号19番となる。
- 1985年9月30日アニメ「ハイスクール!奇面組」の主題歌ユニットとして、高井麻巳子と岩井由紀子でうしろゆびさされ組が結成される。
- 1985年10月5日デビューシングル「うしろゆびさされ組」発売。オリコン最高5位。
- 1986年1月21日2枚目「バナナの涙」がオリコン週間1位を獲得。
- 1986年6月高井麻巳子がソロシングル「シンデレラたちへの伝言」でオリコン初登場1位。
- 1987年2月21日6枚目のシングル「かしこ」を発売。これが最後のシングルとなる。
- 1987年4月5日高井麻巳子のおニャン子クラブ卒業とともにユニット解散。同月、後継ユニット「うしろ髪ひかれ隊」が始動。
- 1987年9月20日おニャン子クラブ解散記念コンサートで一夜限りの再結成。解散後、唯一のステージ。
- 1988年5月23日高井麻巳子が秋元康と結婚し、芸能界を引退。その後1年半ほどニューヨークで生活する。
- 1997年岩井由紀子が実業家と結婚し、芸能界を引退。以後は家庭を中心とした生活へ。
- 2002年おニャン子クラブの再結成企画に岩井由紀子が参加し、久しぶりにテレビへ登場。
- 2025年7月5日「おニャン子クラブ結成40周年コンサート」で「うしろゆびさされ組」が後輩メンバーによって歌われる。
- 2026年1月「ハイスクール!奇面組」がノイタミナ枠でリメイク放送。劇中歌として「うしろゆびさされ組」が新録カバーされる。
04派生ユニットの原型としての功績
「うしろ髪ひかれ隊」へのバトン
うしろゆびさされ組の解散から間もない1987年4月、後継ユニットとして結成されたのが「うしろ髪ひかれ隊」です。メンバーは生稲晃子さん、工藤静香さん、斉藤満喜子さんの3人。デビュー曲「時の河を越えて」はやはり『ハイスクール!奇面組』の主題歌となり、こちらもヒットしました。
「うしろ」を引き継いだ名前からして、枠組みを継承する前提だったことがわかります。人が入れ替わっても看板は残る。この考え方はのちのアイドル運営で当たり前になっていきますが、その先例としてうしろゆびさされ組の存在はかなり大きいと言えます。
「派生ユニット」という発明
音楽評論の文脈では、うしろゆびさされ組はしばしば「派生型ユニットの原型」として位置づけられます。大人数のグループから少人数を切り出し、別名義・別コンセプトで作品を出す。モーニング娘。のシャッフルユニットにも、AKB48グループの数々のユニットにも、この発想は形を変えて生き続けています。
しかもうしろゆびさされ組の場合、切り出す理由が「アニメの主題歌」という外部の必然からきていた点が面白いところです。ファンサービスのための分割ではなく、仕事の受け皿としてユニットを作る。ここまで機能的だったからこそ、6枚のシングルという実績が積み上がったのだと思います。
対照的だった2人のその後
同じユニットでも卒業後の歩みはかなり違いました。高井麻巳子さんは1986年6月のソロデビュー曲「シンデレラたちへの伝言」でオリコン初登場1位を記録し、卒業後はドラマなどで女優としての活動を広げます。しかし1988年5月、秋元康さんと結婚してあっさりと芸能界を去ってしまいました。
一方の岩井由紀子さんは「ゆうゆ」の愛称でおニャン子クラブ後期のフロントを担い、グループ解散後はソロ歌手として作品を出しつつ、いわゆる「バラドル」としてバラエティ番組で大活躍。1991年ごろにはテレビ・ラジオのレギュラーを7本抱えていたといいますから、露出量は相当なものでした。その岩井さんも1997年に結婚して引退。歩幅は違えど、2人ともキャリアの途中で自分の意思でマイクを置いた点は共通しています。
052026年現在のうしろゆびさされ組
2026年1月、「奇面組」がノイタミナで復活
うしろゆびさされ組の名前が2026年に急に飛び交った最大の理由は、原点である『ハイスクール!奇面組』の再アニメ化です。2025年10月に発表され、2026年1月からフジテレビ系「ノイタミナ」枠、毎週金曜23時30分からの放送としてスタートしました。全12話で、最終話は2026年3月に放送されています。
一堂零役に関智一さん、冷越豪役に武内駿輔さん、河川唯役に白石晴香さんなど、現在の人気声優が並ぶ布陣。1985年版を夕方に見ていた世代にとっては、深夜枠での復活というのも感慨深いところでしょう。
Night Tempoが再構築した「うしろゆびさされ組」
そして音楽ファンをざわつかせたのが、楽曲「うしろゆびさされ組」の扱いです。新シリーズではオープニング主題歌をBREIMENの「ファンキースパイス feat.TOMOO」、エンディングを離婚伝説の「ステキッ!!」が担当しましたが、それとは別に、あの「うしろゆびさされ組」が劇中歌として新録カバーされました。
劇中歌「うしろゆびさされ組」/歌唱:河川 唯(白石晴香)& 宇留千絵(長谷川育美)/プロデュース:Night Tempo 出典:TVアニメ「ハイスクール!奇面組」公式サイト 主題歌ページ
編曲・プロデュースを手がけたのは、80年代の日本のポップスをダンスミュージックとして再構築する「フューチャー・ファンク」の代表的存在、韓国出身のNight Tempoさん。1985年の後藤次利サウンドが2026年のフロア仕様に組み替えられ、しかもそれを作中キャラクター名義の2人が歌う。オリジナルの「アイドル2人組がアニメの主題歌を歌う」という構造そのものを、40年後にもう一度なぞってみせた形です。発表時にはイメージMVも公開され、当時を知る世代からも今のアニメファンからも反応が集まりました。
2025年夏、40周年コンサートでも歌い継がれた
もうひとつ触れておきたいのが、2025年7月5日に東京・世田谷区民会館(せたがやイーグレットホール)で開催された「おニャン子クラブ結成40周年コンサート」です。1985年7月5日の「セーラー服を脱がさないで」発売からちょうど40年という節目の公演でした。
出演したのは立見里歌さん、白石麻子さん、樹原亜紀さん、富川春美さん、布川智子さん、横田睦美さん、我妻佳代さん、杉浦美雪さんの8人。このステージで、杉浦さんと我妻さんが赤と白のセーラー服に早変わりして「うしろゆびさされ組」を披露しました。約900人の会場が沸いたと報じられています。オリジナルの2人が不在でも曲と衣装だけで通じてしまうのは、やはりこのユニットの強さでしょう。
高井麻巳子さんと岩井由紀子さんの現在
では、当のお2人はどうしているのか。正直に書くと、2026年8月現在、2人が公の場に出てきたという確かな情報は確認できません。
高井麻巳子さんは1988年の結婚以降、芸能活動を再開していません。2004年に夫の秋元康さんがテレビ出演した際に自宅の映像が流れ、16年ぶりに姿が映ったことが話題になりましたが、それ以降もメディアへの登場はごく限られています。イラストレーターとしての一面があり、2003年には秋元康さんと共作の絵本を刊行。近年は株式会社秋元康事務所の監査役を務めていたことが知られていますが、報道によれば現在は同職を退いているようです。
岩井由紀子さんも1997年の引退以降は一般の生活を送っています。2002年のおニャン子クラブ再結成企画への参加、そして2007年にテレビ番組へ電話出演したという情報が残っていますが、その後は表舞台に出ていません。ときおりネット上で近況をめぐる噂が流れることもありますが、本人や関係者の発表、大手メディアの報道として裏づけられたものは見当たりませんでした。ここは「静かに暮らしておられるようだ」という以上には踏み込まないでおきます。
裏を返せば、うしろゆびさされ組の「現在」は、2人がステージに戻ることではなく、楽曲と衣装と名前が別の人の手で受け継がれ続けていることの中にあるのかもしれません。40年前のシングル攻勢が、2026年のノイタミナ枠にまで届いている。これはなかなか稀なことです。
06うしろゆびさされ組の2026年まとめ
活動期間はたった1年半、シングルはたったの6枚。それでも「うしろゆびさされ組」という名前は40年を越えていまだに現役です。高井麻巳子さんと岩井由紀子さんは早い段階で芸能界を離れ、静かな生活を選びました。にもかかわらず、2025年には後輩メンバーによって40周年コンサートで歌われ、2026年にはアニメのリメイクで新しい歌声とビートをまとって帰ってきた。人ではなく曲とコンセプトが生き残る、という珍しい形の長寿ユニットになったわけです。
うしろゆびさされ組 2026年現在まとめ
- 高井麻巳子さんと岩井由紀子さんによるおニャン子クラブ発のユニット。1985年9月結成、1987年4月に高井の卒業とともに解散した。
- アニメ「ハイスクール!奇面組」の主題歌ユニットとして誕生し、シングル6枚はいずれもオリコン上位。2枚目「バナナの涙」で週間1位を獲得した。
- 解散後にステージで再結成したのは1987年9月のおニャン子クラブ解散記念コンサートのみで、以降ユニットとしての再結成はない。
- 後継ユニット「うしろ髪ひかれ隊」に枠組みが継承され、のちのアイドル界における派生ユニットの原型と評価されている。
- 2025年7月5日の「おニャン子クラブ結成40周年コンサート」では、杉浦美雪さんと我妻佳代さんが赤と白のセーラー服で「うしろゆびさされ組」を披露した。
- 2026年1月から3月まで「ハイスクール!奇面組」がノイタミナ枠でリメイク放送(全12話)。劇中歌「うしろゆびさされ組」はNight Tempoプロデュース、白石晴香さんと長谷川育美さんの歌唱で新録された。
- 高井麻巳子さんは1988年の結婚後は表舞台から離れ、絵本の刊行や秋元康事務所の役職が知られる。岩井由紀子さんは1997年の引退以降は一般の生活。2026年8月現在、両名の公の活動は確認できていない。
赤いセーラー服の2人組が指をさしていたあの光景から40年。当人たちがマイクを置いても、曲は誰かに歌われ、アニメは新しい世代に届いています。2026年版の「うしろゆびさされ組」を耳にして胸がざわついた方は、ぜひ1985年のオリジナルも聴き直してみてください。後藤次利さんのベースラインと、あの少しぶっきらぼうなハーモニーが、当時の夕方の空気ごと連れてきてくれるはずです。