「Diamonds<ダイアモンド>」を、カラオケで思いきり歌った記憶がある方も多いのではないでしょうか。1980年代後半から90年代にかけてのバンドブームのど真ん中で、プリンセス プリンセスのボーカルとしてマイクを握り、しかも大ヒット曲の多くを自ら作曲していたのが奥居香さんです。力強くまっすぐな歌声は、当時の女の子たちにとって「バンドをやってもいいんだ」という勇気そのものでした。ところが解散後は結婚や改名があり、「今は何という名前で、何をしているの?」と気になっている方もいるはず。この記事では、奥居香さんの全盛期から転機、そして岸谷香として走り続ける2026年現在の姿まで、たっぷりご紹介します。

01奥居香のプロフィール

現在の名義
岸谷香(きしたに かおり)
旧名義
奥居香(おくい かおり)
生年月日
1967年2月17日(59歳)
出身
広島県広島市出身、東京育ち
職業
シンガーソングライター、ボーカリスト、ギタリスト
在籍バンド
プリンセス プリンセス(ボーカル)、Unlock the girls(ボーカル・ギター)
代表曲
「Diamonds<ダイアモンド>」「世界でいちばん熱い夏」「M」「OH YEAH!」
所属
オールスパイスカンパニー

名前は変わっても、プリプリの名曲を生んだ本人が今もバリバリの現役、というのがまず嬉しいポイントです。

02全盛期の活躍――プリプリの時代

5人の出会いから、赤坂小町を経てデビューへ

プリンセス プリンセスの物語は、1983年2月20日に5人のメンバーが出会ったところから始まります。当初は「赤坂小町」というグループ名で活動し、その後プリンセス プリンセスへと改名。1986年にミニアルバム『Kissで犯罪』でデビューを果たしました。メンバーは奥居香さん(ボーカル)、中山加奈子さん(ギター)、渡辺敦子さん(ベース)、今野登茂子さん(キーボード)、富田京子さん(ドラム)の5人。女性だけで楽器を持ち、自分たちの曲を鳴らすというスタイルは、当時まだまだ珍しいものでした。

「世界でいちばん熱い夏」から「Diamonds」へ

1987年に「世界でいちばん熱い夏」を発表すると、バンドは一気に注目を集めます。そして1989年、「Diamonds<ダイアモンド>」がミリオンセールスを記録する大ヒットに。続いて「OH YEAH!」などのシングルもオリコン1位を次々と獲得し、アルバムもミリオンを達成しました。バンドブームという時代の追い風もありましたが、それ以上に、キャッチーでありながら胸に刺さるメロディと、奥居香さんの突き抜けるような歌声が多くの人をとらえていたのだと思います。

女性バンドとして初めての日本武道館

1989年、プリンセス プリンセスは女性バンドとして初めて日本武道館での公演を実現します。これは日本のロック史に残る出来事で、「ガールズバンドの先駆者」と呼ばれる大きな理由のひとつになりました。13年間の活動でライブ動員は190万人にのぼったとされ、ステージの真ん中で汗だくになって歌う奥居香さんの姿は、多くのファンの記憶に焼きついています。

切ないバラード「M」の存在感

アップテンポのロックナンバーだけでなく、バラード「M」も忘れてはいけません。恋の終わりを描いたこの曲は、今も「失恋ソングの定番」として歌い継がれています。元気いっぱいの曲とこうした繊細な曲を同じ人が作曲し、歌い分けていたところに、奥居香さんの音楽家としての幅の広さがよく表れています。

03転機――解散と岸谷香への改名

人気絶頂のまま走り続けたプリンセス プリンセスですが、1996年5月31日の日本武道館公演をもって解散します。同じ年、奥居香さんは俳優の岸谷五朗さんと結婚。このニュースは当時大きく報じられました。

解散後はソロアーティスト「奥居香」として活動を始めましたが、2001年にはアーティスト名を本名の「岸谷香」に変更。ここからしばらくは、ソニーミュージックの公式プロフィールによれば「育児に音楽生活に」マイペースに活動する時期が続きます。第一線から少し距離を置いたこの時期が、「奥居香さんは今どうしているんだろう?」という疑問が生まれるきっかけにもなりました。

大きな転機となったのが、2011年の東日本大震災です。被災地の復興支援をきっかけに本格的な活動を再開し、2012年にはプリンセス プリンセスの期間限定再結成を発表。全国ツアーのファイナルとして、同年12月23日・24日に東京ドーム2日間公演を行い、2日間でのべ約9万人が集まりました。再結成期間全体では約13万人を動員し、2016年3月26日に活動を終えています。

  • 1983年5人のメンバーが出会い、赤坂小町として活動を始める。
  • 1986年プリンセス プリンセスとしてミニアルバム『Kissで犯罪』でデビュー。
  • 1989年「Diamonds<ダイアモンド>」がミリオンヒット。女性バンド初の日本武道館公演を実現。
  • 1996年5月日本武道館公演をもってプリンセス プリンセスが解散。同年、岸谷五朗さんと結婚。
  • 1997年ソロアーティスト「奥居香」として本格的に活動。
  • 2001年アーティスト名を本名の「岸谷香」に変更。
  • 2012年震災復興支援のためプリンセス プリンセスが期間限定で再結成。12月に東京ドーム2日間公演。
  • 2015年シングル「DREAM」をリリースし、ソロで全国ツアーを実施。
  • 2016年3月プリンセス プリンセスの再結成期間が終了。
  • 2017年ガールズバンド「Unlock the girls」を結成。
  • 2020年4月ニッポン放送「オールナイトニッポン MUSIC10」のパーソナリティを担当開始。
  • 2024年デビュー40周年ツアーを開催。ファイナルでプリプリの『HERE WE ARE』を全曲カバー。
  • 2026年バンドツアー「59th SHOUT!」、弾き語りツアー「10回目のひとり旅」を開催。

04深掘り――作曲家としての奥居香

ヒット曲の多くを書いた「メロディメーカー」

プリンセス プリンセスというと「元気なボーカル」のイメージが強いかもしれませんが、奥居香さんの本当のすごさは作曲にあります。ソニーミュージックの公式プロフィールでも、「Diamonds」をはじめとするミリオンヒット曲の作曲を手がけたことが紹介されています。作詞はメンバーが担当することが多く、たとえば「Diamonds」は中山加奈子さん、「M」は富田京子さんの詞に奥居香さんが曲をつけたもの。メンバーそれぞれの言葉を、奥居香さんのメロディが大きな歌に育てていく――この分業こそがプリプリの強さでした。

「自分で曲を作って歌う女性」のロールモデル

当時は、女性ボーカリストが自作曲をヒットさせ、しかもバンドの中心で鳴らすという例はまだ多くありませんでした。奥居香さんの存在は、のちに登場する多くのガールズバンドや女性シンガーソングライターにとって、ひとつの道しるべになったと言えるでしょう。実際、2026年2月の「岸谷香感謝祭」にはBONNIE PINKさんや、いきものがかりの吉岡聖恵さんといった後輩世代のアーティストがゲストとして駆けつけています。

時代を越えてバズる名曲たち

おもしろいのは、プリプリの曲がSNS時代になって新しい広がりを見せていることです。Rolling Stone Japanの2025年7月の記事によると、2025年4月にTikTok公式アカウントが開設され、「Diamonds<ダイアモンド>」のMVシーンが投稿されると話題に。インフルエンサーによる振り付け動画も広がりました。1989年に生まれた曲が、当時を知らない世代に「新しい曲」として届いているのは、メロディそのものが持つ力の証拠ではないでしょうか。

052026年現在の活動

3本柱で動く音楽生活

2026年現在、岸谷香さんの音楽活動は大きく3つの柱で成り立っています。ガールズバンド「Unlock the girls」、ピアノとアコースティックギターによる弾き語り、そしてビッグバンド編成の「D.S.O.」です。DI:GA ONLINEのインタビューでは、この形を20代のころから思い描いていたと語っており、ようやく自分の土台がしっかり固まったという手応えがうかがえます。

新年の恒例となっているのが、ビルボードライブでの新春公演「KAORI PARADISE 2026 新春スペシャル」。2026年1月9日の東京、16日の横浜、18日の大阪と3都市で開催され、Sugarbeansさん率いるD.S.O.が華やかなビッグバンドサウンドで岸谷香さんの歌を彩りました。ジャズのスタンダードからプリプリの曲まで、大人の空間でじっくり聴けるステージです。

感謝祭と「59th SHOUT!」ツアー

2月23日には、東京・EX THEATER ROPPONGIで毎年恒例の「岸谷香感謝祭2026」を開催。BARKSのレポートによれば、チケットは発売と同時に完売し、BONNIE PINKさん、吉岡聖恵さんを迎えて約2時間半のステージを繰り広げました。吉岡聖恵さんとは、岸谷香さん自身がアレンジしたいきものがかりのヒット曲メドレーも披露したそうです。

そして夏には、Unlock the girlsとの全国ツアー「KAORI KISHITANI / Unlock the girls LIVE TOUR 2026 “59th SHOUT!”~A面に恋をしたあなたへ~」を実施。6月13日の大阪を皮切りに、川崎、名古屋、福岡、広島、新潟、仙台、札幌を回り、7月26日の豊洲PITでファイナルを迎えました。タイトルの「59th」は59歳を迎えた自身の年齢にちなんだもの。Unlock the girlsは、50歳のときに結成したバンドで、2026年で9年目に入っています。

今回のツアーでは、ベースのHALNAさんが産休に入ったため、山口メイ子さんがサポートで参加。女性だけのバンドだからこそ産休という仕組みを取り入れた、という岸谷香さんの考え方も印象的でした。インタビューでは、ツアーに向けた思いをこう語っています。

ダメなところも、他の誰でもない『自分』をつくるパーツの1つ 出典:DI:GA ONLINE 2026年6月11日

6月19日の神奈川・CLUB CITTA’公演では、新しく手に入れたレスポールで幕を開け、2025年リリースのEP表題曲「ボディガード」や「Diamonds<ダイアモンド>」も披露。歌詞ができたばかりの新曲を、歌詞カードを見ながら演奏する場面もあったとレポートされています。「私のギターが一番成長しました!」と笑う59歳のギタリスト、なんともかっこいいですよね。

秋は弾き語りツアー「10回目のひとり旅」

2026年9月からは、弾き語りツアー「KAORI PARADISE 2026 10回目のひとり旅」がスタートしています。9月4日の東京・なかのZERO大ホールを皮切りに、千葉・松戸、新潟・見附、静岡・三島、神奈川・関内ホール、そして出身地である広島と巡り、10月以降も鹿児島、愛知、秋田、福岡などで公演が予定されています。ピアノとアコースティックギターだけで、プリプリの名曲と自身のソロ曲を歌うスタイルで、シリーズ10回目の節目となるツアーです。

ラジオでも毎月会える

ラジオでは、ニッポン放送「オールナイトニッポン MUSIC10」のパーソナリティを2020年4月から担当しています。毎月第4水曜日の担当回では、音楽の話題はもちろん、日々の小さな気づきを飾らない言葉で語っており、番組ブログでも2026年1月、2月、4月、5月、7月などの放送回の様子が紹介されています。ステージとはまた違う、素顔に近い岸谷香さんに触れられる場所として、ファンにはおなじみです。

06まとめ

プリンセス プリンセスのボーカルとして、そして名曲の作曲者として時代を駆け抜けた奥居香さん。解散、結婚、改名を経て一度は表舞台から少し距離を置きましたが、震災復興支援をきっかけに本格復帰し、今は岸谷香として、かつて以上に多彩なかたちで音楽を鳴らし続けています。

奥居香 2026年現在まとめ

  • 2001年に本名の「岸谷香」へ改名し、現在もこの名義で活動中
  • 2017年結成のガールズバンド「Unlock the girls」でボーカル・ギターを担当
  • 2026年夏、全国9会場のバンドツアー「59th SHOUT!」を完走
  • 2026年9月から弾き語りツアー「10回目のひとり旅」を全国で開催中
  • 1月はビッグバンドD.S.O.とビルボードライブ3都市で新春公演
  • 2月の「岸谷香感謝祭2026」はBONNIE PINKさん・吉岡聖恵さんを迎えて完売
  • 「オールナイトニッポン MUSIC10」で毎月第4水曜日にパーソナリティを担当

「奥居香さんは今?」という問いへの答えは、「名前を変えて、今もステージのど真ん中で歌っている」です。プリプリの曲を懐かしく思い出した方は、ぜひ一度、今の岸谷香さんのライブに足を運んでみてください。あのころと同じメロディが、59歳の今の声で、また違った輝きを放っているはずです。