「たのきん」と聞いて、真っ先に田原俊彦さんと近藤真彦さんの顔が浮かぶ人は多いと思います。でも、その隣でくしゃっと笑っていた三番目の男を忘れてはいけません。野村義男さん、通称「ヨッちゃん」。あの独特のふわっとした髪型と、どこか気の抜けた愛嬌のある笑顔。アイドルらしいアイドルではなかったのに、なぜかいちばん記憶に残っている——そんな人も少なくないはずです。あれから40年以上。ヨッちゃんは今、どこで何をしているのでしょうか。結論から言うと、彼はいま「日本屈指のギタリスト」として、ステージの上に立ち続けています。この記事では、全盛期からの歩みと、2026年現在の活動をたっぷり追いかけていきます。
01野村義男のプロフィール
- 本名
- 野村義男(のむら よしお)
- 生年月日
- 1964年10月26日(2026年8月現在61歳)
- 出身地
- 東京都中野区
- 血液型
- A型
- 愛称
- ヨッちゃん/よっちゃん
- デビュー
- 1979年 ドラマ『3年B組金八先生』出演
- 主な肩書き
- ギタリスト/音楽プロデューサー/ナレーター
- 主な所属バンド
- THE GOOD-BYE、RIDER CHIPS ほか
こうして並べてみると、「元アイドル」という肩書きがどこにもないのが、なんだかヨッちゃんらしくて痛快です。
02全盛期の活躍――アイドルからバンドマンへ
『3年B組金八先生』が生んだ「たのきんトリオ」
野村さんが世に出たのは1979年、TBS系ドラマ『3年B組金八先生』の第1シリーズでした。演じたのは梶浦裕二役。同じクラスには田原俊彦さん、近藤真彦さんがいて、この3人が「たのきんトリオ」として一気にお茶の間の人気者になります。「た」の田原、「の」の野村、「きん」の近藤。名前の頭文字を並べただけのシンプルなネーミングですが、その語感の良さも手伝って、1980年前後の日本は本当に「たのきん」一色でした。
12歳でスカウトされて事務所に入ったことを考えると、まだ十代半ばの年齢であの熱狂のど真ん中にいたことになります。今のアイドル文化の原型が、あそこで作られたと言ってもいいかもしれません。
「歌って踊る」路線に乗らなかった三番目の男
面白いのは、たのきんの3人が同じ方向に進まなかったことです。田原さんと近藤さんが立て続けにレコードデビューして歌謡曲のトップランナーになっていく一方で、野村さんはソロ歌手としてのデビューがなかなか訪れませんでした。当時のファンからすれば「なぜヨッちゃんだけ?」という気持ちもあったでしょう。
ただ、後年のインタビューで本人が語っているところによれば、この時期の野村さんはすでにギターに夢中でした。小学生のころに始めたギターがどんどん生活の中心になっていき、「歌って踊る」よりも「ギターを持って鳴らす」ほうに気持ちが向いていたのです。アイドルとして与えられた役割と、自分がやりたいことのズレ。そこに正直だったのが、この人の一番の個性だったのだと思います。
1983年、ソロ作品とバンド結成が同時にやってくる
そして1983年6月、野村さんはついにソロ作品『待たせてSorry』を発表します。ビクターからのリリースで、たのきん時代を締めくくるような一枚でした。ところがこの作品の発表会見の場で、同時にお披露目されたのが新バンド「The Good-Bye」だったのです。ソロデビューと同時にバンドの旗を掲げるという、なかなか他に例のないスタートでした。
The Good-Byeは野村さん(ギター・ボーカル)、曾我泰久さん(ギター・ボーカル)、加賀八郎さん(ベース・ボーカル)、衛藤浩一さん(ドラム・ボーカル)の4人編成。同年9月1日にシングル「気まぐれOne Way Boy」でデビューし、その年の日本レコード大賞で最優秀新人賞に輝きます。アイドルとしてではなく、バンドとして評価された。この事実が、野村さんのその後の人生の方向をはっきり決めたと言っていいでしょう。
バンドとして駆け抜けた80年代
The Good-Byeは活動休止までに15枚のシングルと9枚のオリジナルアルバムを残しました。「元アイドルのバンドごっこ」と見られがちな逆風のなかで、コーラスワークとポップなメロディを武器に着実に作品を積み上げていったのは相当な体力です。だからこそ、今も熱心なファンが残り続けているのでしょう。
03転機――アイドル卒業とギタリストへの道
活動休止、そして独立
The Good-Byeは1990年4月1日に活動休止に入ります。そして野村さんは26歳で事務所から独立しました。芸能界の大きな傘の下から、たった一人で外に出たわけです。
ここからが本当の勝負でした。後のインタビューで本人が振り返っているのは、独立直後に音楽の仕事の依頼がほとんど来なかったという現実です。喫茶店で水一杯を前に何時間も粘りながら、地道に人と会って仕事をつなげていったという趣旨のことを語っています。テレビで見ていた「たのきんのヨッちゃん」が、ギター1本を抱えて業界を回っていた。そう考えると、なかなかグッとくるものがあります。
裏方のギタリストとして評価されるまで
転機になったのは1998年、浜崎あゆみさんのバックバンドでギタリストを務めるようになったことです。ここから約20年にわたり、日本のポップスの最前線で「音を鳴らす側」として活動することになります。ドームクラスの会場で、スポットライトの真ん中ではなく少し後ろに立ち、正確に、そして骨太に弾き続ける。かつてアイドルとして真ん中に立っていた人が、自ら望んで脇に回り、そこで一流と認められたのです。
2000年には仮面ライダーシリーズの公式バンド「RIDER CHIPS」に参加。2001年春には世良公則さんとのバンド「GUILD9」を結成し、以降も宇都宮隆さんのプロジェクトなど、さまざまな現場でギターを弾いてきました。「元アイドル枠」ではなく「頼れるギタリスト枠」で呼ばれる存在に、いつのまにか完全に変わっていたわけです。
- 1976年ごろ12歳でスカウトされ、ジャニーズ事務所に入所。
- 1979年『3年B組金八先生』第1シリーズに梶浦裕二役で出演。田原俊彦さん・近藤真彦さんと「たのきんトリオ」として人気を集める。
- 1983年6月ソロ作品『待たせてSorry』を発表。同時に新バンドThe Good-Byeがお披露目される。
- 1983年9月The Good-Byeとしてデビュー。同年の日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞。
- 1990年4月The Good-Bye活動休止。26歳で事務所から独立し、フリーの音楽家として歩み始める。
- 1998年浜崎あゆみさんのバックバンドでギタリストを担当。以後約20年にわたり支える。
- 2000年仮面ライダー公式バンド「RIDER CHIPS」に参加。
- 2001年世良公則さんとバンド「GUILD9」を結成。
- 2003年The Good-Byeが活動を再開。以降、節目ごとにライブを重ねる。
- 2013年7月メンバーの加賀八郎さんが逝去(デイリースポーツほか報道)。残る3人で活動を続ける道を選ぶ。
- 2019年8月The Good-Byeが30年ぶりのアルバム『Special ThanX』をリリース。
- 2024年10月還暦。ソロアルバム『440hz with〈No Guitar, No Life〉』を発表し、記念ライブも開催。
バンドを続けるという選択
2013年7月、The Good-Byeのベーシスト・加賀八郎さんが多発性骨髄腫のため55歳で亡くなりました。デイリースポーツやシネマトゥデイなど各媒体が報じた、バンドにとって大きな出来事でした。それでも野村さん、曾我さん、衛藤さんの3人は活動をやめませんでした。2019年には30年ぶりの新作を出し、2023年にはデビュー40周年を迎えています。「解散はしない」という姿勢を貫き続けているのが、このバンドのすごいところです。
04ギターコレクターとしての顔
400本を超えるギターと暮らす男
野村さんを語るうえで外せないのが、常軌を逸したレベルのギターコレクションです。2015年に出版された『野村義男の”思わず検索したくなる”ギター・コレクション』(リットーミュージック)は、所有するギターをブランド別にひたすら並べた一冊で、ギター好きのあいだで話題になりました。
そして2024年10月11日には、還暦を記念した増補版が発売されます。版元の発表によれば、収録本数は400本超。前作から9年のあいだに100本以上増えていたというのですから、もはや趣味というより生活様式です。エフェクターについても『野村義男の”足の踏み場もない”エフェクター・コレクション』という一冊があり、タイトルからしてすでに部屋の状態が想像できます。
「ギターバカ」を隠さない姿勢
野村さんは長年、ギター専門誌で連載を持ち、機材について語り続けてきました。1999年から2018年まで続いた『GO!GO!GUITAR』の連載は、実に19年もの長寿企画です。近年も『ギター・マガジン・レイドバック』での連載をまとめた原稿が書籍に収録されるなど、書き手・語り手としての仕事も続いています。
インタビューで自ら「日本一のギターバカボン」を目指していると語るくらい、この人はギターへの偏愛を隠しません。アイドル時代の話を振られても嫌がらず、けれど話の主役は必ずギターに戻ってくる。そのブレなさが、同世代のファンにも、ギターを弾く若い世代にも愛される理由なのだと思います。
ラジオでも語り続けている
音楽の現場だけでなく、マイクの前でも活動しています。レインボータウンFMの『EMOTIONAL BEAT 〜好きで何が悪い?〜』は2019年7月にスタートした番組で、野村さんと田村直美さんが月替わりで担当する形が続いています。好きなものを好きだと言い切るタイトルが、そのまま本人のスタンスを表しているようです。
052026年現在の活動
近藤真彦さんとの全国ツアー「MasahikoとYoshio」
2026年の野村さんを語るうえで、いちばんの話題はやはりこれでしょう。たのきんトリオの盟友・近藤真彦さんと組んだ「MasahikoとYoshio Live Tour 2026」が、2026年2月に全国で開催されました。2月7日のZepp Nambaを含む各地を回り、セットリストには「KING and QUEEN」「純情物語」といった近藤さんの代表曲に加え、洋楽のカバーなども並んだと伝えられています。
この2人のタッグは今回が初めてではなく、2021年末から2022年にかけても全国ツアーを行っています。40年以上前に同じ教室で撮影していた2人が、還暦を過ぎてなお同じステージに立っている。しかも一方が歌い、一方がギターを弾くという形で。これはもう、ちょっとしたドラマです。
バースデーライブへのサプライズ参加
さらに2026年7月22日、近藤真彦さんが都内で開催した「MASAHIKO KONDO Birthday Live 2026」に、野村さんがサプライズで参加しました。約5000人のファンが詰めかけた会場で、リハーサルなしの飛び入りだったといいます。近藤さんが「急なお願いでスケジュールを無理やり作ってくれた」と感謝を述べた一方、野村さんはこんなふうに軽やかに返しています。
1週間前から話が出ていたと思います。 出典:ORICON NEWS 2026年7月23日
段取りの手違いでたまたま予定が空いた、という話がそのまま「じゃあ出るよ」につながってしまう関係性。半世紀近い付き合いだからこその距離感で、聞いているこちらまで嬉しくなってしまいます。
THE GOOD-BYEは全国11か所のツアー中
バンドのほうも絶好調です。THE GOOD-BYEは2026年、全国11か所を回るツアー「THE GOOD-BYE LIVE TOUR 2026 - HELLO GOOD-BYE ROAD -」を開催しています。前半は6月6日の福岡を皮切りに、広島、京都(完売)、高松、6月26日のZepp Haneda、7月4日の仙台PIT。そして後半は8月26日の名古屋ダイアモンドホールから、なんばHatch、札幌cube garden、KT Zepp Yokohama、9月6日の清水SOUND SHOWER arkまで続く長丁場です。
つまりこの記事を書いている2026年8月現在、ツアーはまさに後半戦に突入するタイミング。デビューから43年目のバンドが、Zeppクラスの会場を11か所回るというのは、素直にすごい体力だと思います。
RIDER CHIPS、ソロ、そしてトークライブ
仮面ライダーの公式バンド・RIDER CHIPSでの活動も継続中です。2026年2月3日には横浜アリーナで開催された「超英雄祭 KAMEN RIDER × SUPER SENTAI LIVE & SHOW 2026」のDAY1に出演。前年の2025年秋には「Timeless Goldmine」と題したツアーで札幌・東京・仙台・大阪・名古屋を回り、12月には横浜でクリスマス公演も行っています。特撮ファンにとって、野村さんはもはや「たのきんの人」ではなく「ライダーの人」なのです。
ソロ名義の活動も止まっていません。公式サイトの告知によれば、2026年10月9日には有楽町I’M A SHOWでソロライブ「おなか(ま)いっぱいLIVE’26」を予定。さらに、ギターを抱えて全国を回りながら喋り倒す「トークLIVE TOUR」も継続しており、2026年は九州エリアでの開催が企画されているとされています。田村直美さんとのバンド「Sho-ta with Tenpack riverside rock’n roll band」でも7月下旬から8月にかけて大阪・名古屋・東京・静岡を回る予定が組まれ、世良公則さんの2026年のツアーにも名前が挙がっています。
正直、スケジュールを並べているだけで息が切れてきます。61歳でこれだけのプロジェクトを掛け持ちして全国を移動しているのですから、恐れ入ります。
06まとめ――野村義男の今
たのきんトリオの三番目として、少し不器用に、少し不思議な立ち位置でお茶の間に愛された「ヨッちゃん」。あの少年は、アイドルという枠を自分から降りて、ギター1本で40年以上を生き抜きました。しかもその結果として、かつての盟友と同じステージに笑って立てているのですから、これ以上の答え合わせはないでしょう。
野村義男 2026年現在まとめ
- 1964年生まれの61歳。ギタリスト・音楽プロデューサーとして現役で活動中
- 2026年2月、近藤真彦さんとの全国ツアー「MasahikoとYoshio Live Tour 2026」を開催
- 2026年7月22日、近藤さんのバースデーライブにリハーサルなしでサプライズ参加
- THE GOOD-BYEは2026年に全国11か所ツアー「HELLO GOOD-BYE ROAD」を実施中
- 仮面ライダー公式バンドRIDER CHIPSとして2026年2月の「超英雄祭」に出演
- 所有ギターは400本超。2024年10月に還暦記念の増補コレクション本を刊行
- ラジオ番組やトークライブなど、語り手としての仕事も継続中
「歌って踊るアイドル」にはならなかったけれど、代わりに彼は「一生ギターを弾いていられる人生」を手に入れました。ステージの真ん中にいなくても、音は確実に届く。そして時々、真ん中に呼び戻されて、旧友の隣で笑ってみせる。2026年の野村義男さんは、たぶん本人がいちばん望んだ形で音楽の現場に立ち続けています。今年の秋も、全国のどこかのライブハウスで、あのくしゃっとした笑顔がギターを鳴らしているはずです。