力んだ変顔で「悔しいです!」、袖をまくって「カッチカチやぞ!」――2008年ごろ、テレビをつければザブングルの加藤歩さんがいた、という記憶を持っている方は多いのではないでしょうか。相方の松尾陽介さんとのコンビで一気にブレイクし、典型的な「一発屋」として消費され、いつの間にかテレビから姿を消した。そんな印象のまま止まっている人もいるかもしれません。ところが2026年現在の加藤さんは、お笑い芸人でありながら消防設備士・宅地建物取引士・FP2級という資格を次々取得し、「今が一番幸せかも」と語る第二の人生のまっただ中にいます。全盛期の活躍から転機までを振り返りつつ、加藤さんの「今」をじっくりまとめました。
01ザブングル加藤のプロフィール
- 本名
- 加藤 歩(かとう あゆむ)
- 愛称
- ザブングル加藤
- 生年月日
- 1974年10月26日(51歳)
- 出身地
- 三重県四日市市
- 所属事務所
- ワタナベエンターテインメント
- 主な活動
- お笑い芸人(ピン)・消防設備士
- 保有資格
- 消防設備士・宅地建物取引士・FP技能士2級
- 代表ギャグ
- 「悔しいです!」「カッチカチやぞ」
2026年で51歳。あの脂ぎった変顔の印象が強いので意外に思うかもしれませんが、加藤さんは三重県四日市市の出身で、名古屋商科大学を卒業しているという経歴の持ち主です。
02全盛期の活躍――悔しいですで駆け上がった一発屋
コンビ名は加藤さんの一言から
ザブングルは1999年9月、加藤歩さんと松尾陽介さんによって結成されたお笑いコンビです。加藤さんがボケ、松尾さんがツッコミという役割分担で、それぞれ別のコンビを経たうえで合流した、いわゆる再編成組でした。所属はワタナベエンターテインメント。コンビ名の語感のインパクトもあって、一度聞いたら忘れにくい名前でしたよね。
結成からブレイクまでには、実はかなりの下積み期間がありました。すぐに売れたわけではなく、コツコツとネタを磨き続けた約8年。その地道さが、のちの資格取得にもつながる加藤さんの本質だったのかもしれません。
M-1決勝で評価され、2008年に大ブレイク
転機は2007年。コンビとして「M-1グランプリ」の決勝に進出し、ネタの完成度やツッコミの巧みさが高く評価されます。これをきっかけに翌2008年、テレビ出演が爆発的に増加しました。バラエティ番組で見ない日はない、というほどの売れっ子になったのがこの時期です。
ちょうど「一発屋」「持ちギャグ芸人」がバラエティの華だった時代。エド・はるみさんやムーディ勝山さんといった面々と並んで、ザブングルもまた、その年の顔のひとつになりました。
「悔しいです!」と「カッチカチやぞ」
加藤さんを一躍有名にしたのが、力んだ独特の変顔で叫ぶ「悔しいです!」のギャグです。何かにつけてこの顔で「悔しいです!」とやる芸風は、子どもからお年寄りまで真似するほどの定番ネタになり、インターネット・ミームとしても広く拡散しました。
もうひとつの代表ギャグが、袖をまくって力こぶを見せながら「見ろやこの筋肉!」「カッチカチやぞ! ゴックゴクするやろ!」と畳みかけるネタ。この「カッチカチやぞ」も流行語級の認知度を獲得しました。のちに資格試験の合格報告でこのフレーズをセルフパロディに使うことになるのですが、それは後の話です。
一発屋という宿命
加藤さんのギャグはあまりにキャッチーだったがゆえに、ブームが一巡すると「飽きられる」スピードも速いものでした。2008年のピークから数年で、いわゆる一発屋特有の露出減を経験することになります。当時を振り返って「一発屋」と自虐的に語れるのは、その波をくぐり抜けたからこそ。テレビの第一線から少しずつ距離ができていったのが、2010年代の加藤さんでした。
03転機――闇営業の謹慎からコンビ解散へ
一発屋としての浮き沈みはあったものの、ザブングルは安定して活動を続けていました。その流れが大きく変わったのが、2019年の「闇営業」問題です。シリアスな話題なので、事実ベースで整理します。
- 1999年9月加藤歩さんと松尾陽介さんがお笑いコンビ・ザブングルを結成。
- 2007年「M-1グランプリ」決勝に進出。ツッコミやネタの完成度が高く評価される。
- 2008年「悔しいです!」「カッチカチやぞ」が大ブレイク。テレビ出演が一気に増加。
- 2019年6月過去に事務所を通さず反社会的勢力が関係する会合に参加していたことが発覚。松尾さん・加藤さんともに謹慎処分に。金銭の受領を認めて謝罪。
- 2019年夏謹慎期間中はボランティア活動などに取り組み、自身を見つめ直す。9月1日に活動を再開。
- 2020年活動再開後、明石家さんまさんらから仕事をもらった直後にコロナ禍が直撃。芸能の仕事が激減する。
- 2021年3月31日ザブングルが解散。加藤さんはピン芸人「ザブングル加藤」として活動を継続。松尾さんは芸能界を引退。
問題となった会合への参加自体は数年前のことでしたが、2019年6月に一斉に報じられ、二人そろっての謹慎処分となりました。事務所への報告なく金銭を受け取っていたことを認め、「深く反省している」と謝罪。約半年にわたって無収入の期間を過ごすことになります。
謹慎が明けて活動を再開したものの、ここで追い打ちをかけたのがコロナ禍でした。せっかく仕事が戻りかけた矢先にイベントや営業が軒並み消え、芸人としての収入が大きく落ち込みます。そして2021年3月、21年以上続いたコンビ・ザブングルは解散。後に加藤さんは、解散話自体は松尾さんから謹慎期間中に切り出されたものだったと明かしています。相方は芸能界を引退し、加藤さんはピン芸人として一人歩き出すことになりました。
04深掘り――資格取得と消防設備士という第二の道
副業として始まった消防設備士
加藤さんの第二の人生を語るうえで欠かせないのが、消防設備士という仕事です。コロナ禍で芸能の仕事が激減したことをきっかけに、加藤さんは2020年ごろから消防設備士の資格を取得し、副業として働き始めました。
消防設備士というのは、マンションやビルに設置された消火器・火災報知器などの点検や整備、正しい使い方の指導を行う国家資格の仕事です。加藤さんが取得したのは消火器の点検ができる区分で、週2〜3回ほど現場に出て、各地の建物を回っています。報じられているところでは、これまでに1万部屋以上を点検してきたといいます。日給はおよそ2万円、月にして20〜30万円ほどの安定収入になっているそうです。
なぜ芸人がそこまで本気で、と思うかもしれませんが、加藤さん本人の言葉にその理由がよく表れています。
芸能界と違って安定して仕事があるし、AIにも奪われない仕事。 出典:テレ東プラス 2025年8月15日
浮き沈みの激しい世界を20年以上生き抜いてきた人だからこそ、「安定」と「自分の手で続けられること」の価値を痛いほど分かっている、ということなのでしょう。
100円の過去問から宅建合格へ
消防設備士で「努力すれば結果が出る」面白さに目覚めた加藤さんは、さらに難関資格に挑戦します。それが宅地建物取引士、いわゆる宅建です。
2022年は一度不合格に終わったものの、リベンジに燃えた加藤さんは100円で手に入れた古い過去問なども活用しながら勉強を継続。2023年11月、ついに合格をつかみ取ります。合格証書とともに自身のブログを更新し、「去年だめだったので、めちゃくちゃうれしいです」と喜びを爆発させました。
このとき加藤さんは、自身の持ちギャグをかけて「合格への意思がカッチカチやないか〜!」と報告。「悔しいです!」の人が難関資格に「うれしいです」――というギャップに、ネットでは「普通なかなか受からないですよ」と称賛の声が相次ぎました。宅建の合格率は例年17%前後の狭き門。この快挙は、芸人としての加藤さんを再び一段引き上げることになります。
FP2級まで取得、資格が仕事を呼ぶ
加藤さんの学びはここで止まりません。消防設備士、宅建士に加えて、お金の知識を体系的に扱うFP(ファイナンシャル・プランニング技能士)2級にも合格しています。
面白いのは、この資格取得が芸人としての仕事の幅まで広げている点です。宅建士やFPの肩書きがあることで、不動産関連のイベントや投資をテーマにした番組などへの出演機会が生まれました。副業のために取った資格が、本業の芸能活動を後押しするという好循環が回り始めているわけです。「努力が必ず結果につながる世界のおもしろさ」を知ってしまった、と語る加藤さんの姿は、かつての一発屋のイメージとはまるで別人ですね。
052026年現在の活動
芸人と消防設備士の二刀流を継続中
2026年現在も、加藤さんはピン芸人「ザブングル加藤」としての活動と、消防設備士の仕事を両立させています。週の何日かは現場で点検に汗を流し、空いた時間でお笑いの仕事やイベント、講演に向かう。この二刀流のスタイルが、すっかり加藤さんの生き方として定着しました。
所属はワタナベエンターテインメントのまま。「ザブングル加藤劇場」のような単独ライブも開催されており、お笑いの現場から離れたわけではありません。むしろ、安定した副業の土台があるからこそ、芸人としての活動に肩の力を抜いて臨めているようにも見えます。
「今が一番幸せかも」と語る心境
2025年8月、テレ東プラスなどのインタビューで語った加藤さんの言葉が、現在の心境をよく表しています。
いい感じに、ある意味、今1番幸せかも。 出典:テレ東プラス 2025年8月15日
闇営業での謹慎、約半年の無収入、コロナ禍での仕事激減、そしてコンビ解散。立て続けに襲ってきた苦境を一つずつ乗り越えた先で、加藤さんは「今が一番幸せ」と言い切れるところまで来ました。テレビでの華やかな全盛期ではなく、地に足のついた今を「一番」と表現できるのは、それだけ充実しているということなのでしょう。聞いているこちらまで、なんだか嬉しくなる言葉です。
副業がもたらした思わぬ広がり
消防設備士という副業は、加藤さんに収入の安定だけでなく、新しい仕事の入り口ももたらしました。地道に資格を取って働く芸人、という珍しいキャラクターが注目を集め、副業や資格、お金をテーマにした講演会などに呼ばれる機会が増えているのです。
かつての月収200万円という芸能全盛期の数字からは下がったとされますが、消防設備士の副業を含めた現在の収入は安定しており、何より「自分でコントロールできる仕事を持っている」という誇りが加藤さんを支えています。一発屋として消費されて終わるのではなく、別のフィールドで自分の価値を作り直した――そんな珍しいセカンドキャリアの成功例として、加藤さんの歩みは語られるようになりました。なお、近況はワタナベエンターテインメント所属タレントとして公式のオフィシャルブログでも発信されています。
06まとめ
「悔しいです!」の変顔で2008年を駆け抜けた一発屋が、まさか消防設備士・宅建士・FPの三冠を引っさげて返り咲くとは、当時誰が想像したでしょうか。闇営業の謹慎やコンビ解散というつらい転機を経て、2026年現在の加藤さんは、芸人と資格職の二刀流で堂々と第二の人生を歩んでいます。
ザブングル加藤 2026年現在まとめ
- 2021年3月のコンビ解散後、ピン芸人「ザブングル加藤」として活動継続
- コロナ禍をきっかけに2020年ごろから消防設備士の副業を開始
- これまでに1万部屋以上を点検、日給約2万円・月20〜30万円の安定収入に
- 2023年に難関の宅地建物取引士に合格、「カッチカチやないか〜!」と報告
- FP2級も取得し、不動産・投資関連の番組やイベントへ活躍の幅が拡大
- 2019年の闇営業による謹慎は事実として認め、謝罪・反省を経て再出発
- 2025年のインタビューで「今が一番幸せかも」と第二の人生を前向きに語る
派手なブレイクのあと、転落しても腐らず、コツコツと資格を積み上げて自分の居場所を作り直す。加藤さんの歩みは、一度ピークを過ぎた人が、それでも前を向いて生き直せることを教えてくれます。「悔しいです!」から「今が一番幸せ」へ。この振れ幅こそが、ザブングル加藤という人の本当の面白さなのかもしれませんね。