「ニャー!」の一言と、青パンツ一丁に裸足、胸に「猫魂」と書かれた赤いTシャツ。ハイテンションで一発ギャグを連発するあのスタイルで、2000年代のバラエティ番組を駆け抜けたお笑い芸人・猫ひろしさん。「ポーツマス、ポーツマス」のギャグを覚えている方も多いのではないでしょうか。そんな猫ひろしさんが、いつの間にかカンボジア国籍を取得してオリンピックのマラソンに出場し、さらには大学院まで修了していた——そう聞いて驚く方も少なくないはず。お笑いとマラソン、そして研究という三足のわらじを履く猫ひろしさんの「今」を、全盛期の活躍からていねいに振り返りつつ、2026年現在の活動まで徹底的にまとめました。

01猫ひろしのプロフィール

本名
タキザキ クニアキ(日本国籍時代:瀧﨑邦明)
生年月日
1977年8月8日(48歳)
出身地
千葉県市原市
国籍
カンボジア(2011年取得)
所属
WAHAHA本舗
出身大学
目白大学人文学部言語文化学科
主な活動
お笑い芸人・マラソン選手・講演
主な実績
2016年リオ五輪 男子マラソン出場(カンボジア代表)

身長147cmという小柄な体ひとつでお笑いと五輪マラソンの両方を駆け抜けてきたわけですから、これはもう驚異的としか言いようがありませんね。

02全盛期の活躍――ニャーで駆け上がったお笑いブレイク

「ニャー」と「ポーツマス」――一発ギャグで茶の間を席巻

猫ひろしさんが芸能界デビューしたのは2001年。師匠はお笑いコンビ・東京ダイナマイトのハチミツ二郎さんです。当初はいくつかの芸名を試されたそうですが、最終的に落ち着いたのが「猫ひろし」でした。

ブレイクのきっかけは、なんといってもあの強烈なキャラクターです。赤地に白文字で「猫魂」と書かれたTシャツ、青いパンツ一丁、そして裸足。「ニャー!」と挨拶をしながら口を開けて両手を前に突き出すポーズは、一度見たら忘れられないインパクトがありました。

そしてもうひとつの代表ギャグが「ポーツマス、ポーツマス」。これ、実は受験勉強で覚えた「ポーツマス条約」が元ネタなんだそうです。意味があるようでないようなシュールなギャグの連発で、猫ひろしさんは一気にお茶の間の人気者になっていきました。

ハイテンション一発ギャグ百連発というスタイル

猫ひろしさんのネタの真骨頂は、とにかくハイテンションで一発ギャグを次々と繰り出していくスタイルにありました。ひとつひとつのギャグは短く、瞬発力勝負。テンポよく畳みかけていく芸風は、バラエティ番組のひな壇やネタ番組で大いに重宝されました。

2000年代といえば、お笑いブームの真っただ中。エンタの神様をはじめとするネタ番組が全盛で、強烈なキャラクターと分かりやすい一発ギャグを持つ芸人さんが次々と世に出た時代でした。猫ひろしさんもまさにその波に乗り、独自のポジションを確立していったわけです。

小柄な体を生かした体当たり芸

身長147cmという小柄な体格も、猫ひろしさんの大きな武器でした。その身軽さを生かした体当たりの芸や、リアクションの大きさは、見ているだけで元気が出てくるような明るさがありました。

「とにかく明るくてエネルギッシュ」というイメージは、後にマラソンランナーとして注目される際にも、彼のキャラクターを支える大きな土台になっていきます。お笑い芸人として培った「全力でやり切る」姿勢こそが、後の人生を切り拓くカギになっていくんですね。

03転機――マラソンとの出会い、そしてカンボジア国籍へ

走ることが「第二の人生」を変えた

猫ひろしさんの人生を大きく変えたのが、マラソンとの出会いでした。もともと足の速さには定評があり、運動神経の良さを生かしてランニングに本格的に取り組むようになります。芸人としてのキャラ作りの一環として始めた面もありましたが、走るほどにタイムは伸び、いつしか「本気のランナー」へと変貌を遂げていきました。

そして2010年、カンボジアで開催された「アンコールワット国際ハーフマラソン」で好成績を残したことが、思いもよらぬ展開を呼び込みます。カンボジア側からオリンピック代表として走らないかという打診があったのです。

  • 2001年お笑い芸人としてデビュー。師匠はハチミツ二郎さん。「ニャー」「ポーツマス」などの一発ギャグでブレイク。
  • 2010年アンコールワット国際ハーフマラソンで好成績を残し、カンボジアから五輪代表の打診を受ける。
  • 2011年11月カンボジア国籍を取得。日本国籍を離脱し、ロンドン五輪を目指すことに。
  • 2012年3月ロンドン五輪のカンボジア代表に内定。しかし直後から大きな議論を呼ぶ。
  • 2012年5月国際陸連が国籍取得・居住実績などの規定を理由に出場資格を認めず、ロンドン五輪出場が消滅。
  • 2016年6月リオ五輪のカンボジア代表に選出。芸人として初の五輪選手に。
  • 2016年8月リオ五輪 男子マラソン本番に出場。2時間45分55秒で完走(139位)。
  • 2023年3月東京マラソンで自己ベストとなる2時間27分02秒を記録。

ロンドン五輪「幻の出場」と大バッシング

カンボジア国籍を取得してロンドン五輪を目指すという決断は、日本国内で賛否を巻き起こしました。「倫理的にどうなのか」「カンボジアの人に失礼ではないか」といった批判が噴出し、猫ひろしさんは大きなバッシングを浴びることになります。

2012年3月にいったんはロンドン五輪のカンボジア代表に内定したものの、国際陸連は「国籍取得から1年未満であること」「継続的な居住実績がないこと」「国際競技会での代表経験がないこと」などを理由に出場資格を満たしていないと判断。同年5月、特例も認められず、ロンドン五輪への出場は幻と消えました。

夢の舞台を目前で失った悔しさは、想像を絶するものだったでしょう。しかし猫ひろしさんは、ここで諦めませんでした。

諦めずにつかんだリオ五輪の舞台

ロンドン五輪を逃した後も、猫ひろしさんは黙々とトレーニングを続けました。そして4年後、2016年のリオデジャネイロ五輪で、ついにカンボジア代表として正式に選出されます。芸人として初の五輪選手という、前代未聞の快挙でした。

8月21日に行われた男子マラソン本番では、2時間45分55秒のタイムで140人中139位ながら見事に完走。順位そのものよりも、何年もの苦難を乗り越えてオリンピックの舞台に立ち、最後まで走り切ったという事実こそが、多くの人の心を打ちました。あれだけのバッシングを受けながら、夢を実現させた執念には頭が下がりますね。

04芸人・五輪選手から研究者へ

48歳で大学院に挑むという決断

リオ五輪を経た後も、猫ひろしさんは走ることをやめませんでした。それどころか、マラソンへの探究心はさらに深まっていきます。その情熱がたどり着いた先が、なんと大学院でした。

猫ひろしさんは順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科に進学し、本格的に研究の世界へ足を踏み入れます。お笑い芸人がオリンピックに出場するだけでも前例のない話なのに、そこからさらに大学院で学問として走りを突き詰めようというのですから、その向学心には驚かされるばかりです。

自らの「18年間の走り」を研究テーマに

注目すべきは、その研究テーマです。猫ひろしさんが取り組んだのは、自身の18年間にわたる競技データと生理指標をもとに、加齢にともなって最大酸素摂取量が低下していく中でも、なぜマラソン記録を維持・向上させることができたのか、という要因を運動生理学的に分析するという内容でした。

つまり、自分自身の体とキャリアそのものを研究対象にしたわけです。実際、猫ひろしさんは40代後半に入ってからも自己ベストを更新し続けてきました。年齢を重ねると身体能力は落ちていくのが一般的ですが、その常識に逆らうように記録を伸ばしてきた「謎」を、本人が科学的に解き明かそうとしたのです。これは、長年走り込んできた当事者だからこそ挑める、唯一無二の研究テーマと言えるでしょう。

「お金払って修行させてもらった2年間」

研究生活は決して甘いものではなかったようです。2026年2月22日、猫ひろしさんは自身のインスタグラムで修士課程の修了が決まったことを報告。その中で、大学院での日々を率直に振り返っています。

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の2年間、特に後半の研究は本当に修行だった。お金払って、好きな事を学びに行ったんだけど、お金払って修行させてもらった2年間だった。 出典:スポニチアネックス 2026年2月23日

「お金払って修行させてもらった」という言い回しに、研究のハードさと、それでも前向きに学び切った充実感の両方がにじんでいますね。芸人らしいユーモアを交えつつも、やり遂げた人だけが言える重みのある言葉だと思います。

大学院で広がった意外な交友も

学生生活では、お笑いの世界とはまた違った出会いもあったようです。猫ひろしさんは大学院で、元中日ドラゴンズの内野手・石川駿さんと友達になったことを明かしています。プロ野球選手と五輪マラソンランナー、そして芸人。バックグラウンドの異なる者同士が、スポーツ科学という共通の学びを通じてつながる——大学院という場ならではの、なんとも面白い交流ですね。

052026年現在の活動

48歳で大学院を修了――「研究や勉強で猫の恩返し」

2026年の猫ひろしさんにとって、最大のトピックはやはり大学院の修了でした。2月22日に修了が決まったことを報告し、3月19日には修了式に出席。長かった2年間の学びに、ひとつの区切りがつきました。

修了の喜びをSNSで発信した際には、元中日の石川駿さんと「ニャー」のポーズで並んだ2ショットも公開され、ファンからは「すごっ!」「なになに、すごい事をしてたんだね」といった祝福の声が多数寄せられました。お笑い芸人としてのイメージしか持っていなかった人にとっては、まさに嬉しい驚きだったことでしょう。研究や勉強で学んだことを、今後の活動に生かしていきたいという思いを語っています。

マラソンは現役続行――東京マラソン2026も完走

研究者としての一区切りをつけた一方で、ランナー・猫ひろしさんは2026年も現役バリバリです。2026年2月28日に開催された東京マラソンにも出場し、2時間31分17秒のタイムで完走しました。

レース後は本人のX(@cathiroshi)でも、応援への感謝や「また必ず挑戦する」という前向きな思いをつづっていました。

40代後半でこのタイムを叩き出し、しかも「また必ず挑戦する」と前を向く姿勢には、本当に頭が下がります。締めくくりに「ありがとうニャー」が出てくるあたりも、いかにも猫ひろしさんらしくていいですね。

講演・トークショーにランニングイベントと幅広く活躍

2026年現在、猫ひろしさんはお笑い・マラソン・研究で得た知見を生かして、講演やトークショーの分野でも活躍の場を広げています。テーマは「やり切る実行力」や「猫まっしぐらに走り切る心」など。お笑い芸人からスタートして、初マラソンからわずか数年で五輪代表まで上りつめた経緯や、日頃のトレーニング方法などを、軽快な語り口で伝えています。

また、各地のマラソン大会やランニングイベントにゲストランナーとして招かれる機会も多く、走る楽しさを広める「ランニングの伝道師」としての顔も定着してきました。市民ランナーにとっては、五輪経験者でありながら気さくに交流してくれる猫ひろしさんの存在は、とても身近で心強いものになっています。

SNSで発信し続ける「猫魂」

猫ひろしさんは公式X(@cathiroshi)やインスタグラム、YouTubeを通じて、マラソンの練習や日々のチャレンジ、近況をこまめに発信し続けています。レースの結果報告や、ランニングクラブの活動、ときには卓球などの新しい趣味への挑戦まで、その発信からは「とにかく何でも全力で楽しむ」というブレない姿勢が伝わってきます。

「ニャー」のキャラクターはそのままに、お笑い・マラソン・研究と活動の幅をどんどん広げていく猫ひろしさん。48歳になった今も、その好奇心とチャレンジ精神はまったく衰える気配がありません。

06まとめ

「ニャー」と「ポーツマス」の一発ギャグで茶の間を沸かせたお笑い芸人が、カンボジア国籍を取得して五輪マラソンを完走し、さらには大学院で自らの走りを科学的に研究して修了する——猫ひろしさんの歩みは、まるでドラマのような展開の連続です。バッシングや挫折を乗り越え、それでも前を向いて走り続けてきた48歳の「今」は、間違いなく充実しています。

猫ひろし 2026年現在まとめ

  • 2001年デビュー、「ニャー」「ポーツマス」の一発ギャグでブレイク
  • 2011年にカンボジア国籍を取得し、2016年リオ五輪の男子マラソンに出場・完走
  • 2026年2月、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の修士課程を修了
  • 研究テーマは自身の18年間の競技データをもとにした記録維持・向上の運動生理学的分析
  • 2026年2月の東京マラソンを2時間31分17秒で完走、ランナーとして現役続行中
  • 講演・トークショーやランニングイベントのゲストとしても活躍
  • 公式X・インスタ・YouTubeで近況や練習の様子を発信中

お笑い、マラソン、そして研究。畑違いに見える三つの道を、どれも全力で「猫まっしぐら」に駆け抜けてきた猫ひろしさん。年齢を言い訳にせず、いくつになっても新しいことに挑み続けるその姿は、見ている私たちに「自分もまだまだやれるかも」と思わせてくれます。これからの猫ひろしさんが、どんな道を走り抜けていくのか。これからも応援していきたいですね。